みなさん、こんにちは。
ブランドデザイナーのホーリーです。
グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートして約30年。
主に企業の広告制作に従事してきました。2014年にブランディングと出会い、その「伝わる威力」に魅了されてから、今年で11年目となりました。
現在は、企業の「らしさ」を磨いて、デザインで「よりよく」伝える、ブランドデザイナーとして活動しています。
前回は「ミッションとは何か」を整理しました。今回はそのミッションを、中小企業でも取り組みやすい「自分たちらしい言葉」としてどう定めるのか。具体的に掘り下げていきます。できるだけ、自分らしく、わかりやすくお伝えできるように心がけました。お読みいただけると嬉しいです。
「ミッション」を定める3つのステップ
ビジョンは、未来に掲げる旗印。つまり、企業やブランドが「どこへ向かうか」という目的地を示します。しかし、その目的地に向かって実際に歩みを進めるためには、「今この瞬間、なぜ私たちはこの事業をしているのか?」という行動理由が必要になります。
その問いに答えるのが「ミッション」です。ミッションは単なるスローガンや業務上の役割ではなく、自分たちの存在意義そのものを言葉にしたもの。つまり、ビジョンを現実化するための起点なのです。
ここでは初心者でも取り組める「ミッションの定め方」を、シンプルな3つのステップで整理してみましょう。
ステップ1:原点に立ち返る(なぜ始めたのか?を振り返る)
ビジョンが未来を描くものだとすれば、ミッションはその未来に説得力を与える“根拠”となる存在です。そのための第一歩は、創業当時やこれまでの歩みを振り返り、「なぜこの事業を始めたのか」という原点を探ることです。
数字の目標ではなく、人としての動機に立ち戻ることが大切です。「地元の人に役立ちたい」「お客さまの“ありがとう”を増やしたい」「家族や仲間の誇りになりたい」──こうした素朴な理由が、ビジョンを支える力強い根っこになります。
Vol.16でもご紹介した、福祉とアートを掛け合わせるヘラルボニーの「異彩を、放て。」という言葉も、創業者が持っていた「知的障害に対するイメージを変えたい」という切実な想いから生まれたものです。理想を掲げるビジョンに対し、ミッションは「なぜそれをやるのか」という原点を示すことで、両者の関係が一本の軸に結びつきます。
ステップ2:社会との関係性を見つめる (誰に、何を届けたいのか)
次に必要なのは、社会や顧客との関係性を見つめ直すことです。ビジョンが未来に向けた旗印なら、ミッションは「いま、誰のために、どんな約束を果たすか」という実践的な姿勢を示すものです。
ここでは、「お客さまにとってどんな存在でありたいか」「社員や地域にどう覚えられたいか」といった問いを投げかけます。ビジョンで示した理想像が、実際に社会や顧客とどうつながるのかを具体化するフェーズです。
たとえばパタゴニアは「地球を救うためにビジネスをする」と表現しました。これは壮大なビジョンに対し、日々の行動を貫くミッションをシンプルに言語化したもの。社員の判断基準となり、顧客からの共感を得る基盤にもなっています。
中小企業の場合も、「この街で一番“ありがとう”を集める会社になる」「次の世代に技術を残す」など、等身大の言葉で十分。大きなビジョンを社会と結びつけることで、現実的な行動の軸が見えてきます。
ステップ3:言葉を磨く(シンプルで覚えやすく)
最後に大切なのは、出てきた想いやフレーズをシンプルで覚えやすい言葉に磨き上げることです。ここでのポイントは、ビジョンの理想を、日々の行動に落とし込める“口にしやすい言葉”にすることです。
複数の案を出して比べながら、「自分自身が自然に口にできるか?」を基準に絞り込みます。ヘラルボニーの「異彩を、放て。」やサントリーの「人と自然と響きあう」のように、短くても強い余韻を残す言葉が理想ですが、おおよそ20〜30文字以内に収まると良いと考えられています。
こうして磨き上げられたミッションは、社員の判断や行動を自然に方向づけ、ビジョンで掲げた未来を現実へと近づける羅針盤となります。
ミッションはビジョンを実現する“選択のことば”
ここまで3つのステップをご紹介しました。
- 原点に立ち返る ― ビジョンに説得力を与える根拠を探す
- 社会との関係性を見つめる ― 誰にどんな約束を果たすのかを考える
- 言葉を磨く ― 理想を日常に落とし込む口にしやすい表現にする
この流れを踏めば、ビジョンとミッションは矛盾せず、一本の軸で結ばれます。ビジョンが未来を照らす旗印なら、ミッションはその光に向かって進むための「今この瞬間の行動理由」です。
ミッションは、誰かに与えられるものではなく、自分たちで選び取る“選択のことば”。だからこそ、社員一人ひとりが「自分ごと」として語れるようになったとき、その会社はビジョンを実現するための確かな推進力を得るのです。
書いて、話して、試してみる
「ミッション」を考える上で、まずはじめは実験的でいいと考えます。「これがウチのミッションです」と掲げる言葉が、最初から完璧である必要はありません。例えば、
・社内の掲示板に貼ってみる
・朝礼で紹介してみる
・名刺の裏に載せてみる
このように、まずは “語れる言葉” を持ち、“共有できる想い” があることが大切です。しっくりこなければ、また直せばいいのです。そうやって育てていくものこそ、「自分たちらしいミッション」なのです。

いかがでしたでしょうか。ミッションとは、単なる存在理由ではなく、未来を現実に変えるための“今この瞬間の行動理由”です。その大切さについて、少しでも理解を深めていただけたでしょうか?次回は、日々の行動を支える基準となる「バリュー」──組織に根づく価値観について掘りさげていきます。どうぞお楽しみに。
つづく
プロフィール
Branding & Design TOYPLOT 代表
ブランドデザイナー ホーリー
1974年生まれ、大阪府出身。
デザインの専門学校を卒業後、数社の広告制作プロダクション勤務を経て、2010年3月独立。
TOYPLOTでは、企業のブランディング及び広告・デザイン制作のご依頼をいただいて活動しています。
これまで多くの広告制作に従事してきましたが、その過程でデザインだけでは解決できなかった課題も少なからずありました。制作したデザインで、クライアントの“想い”や“魅力”をお客さまに伝えきれているのか?と、もやもやとした思いを抱えていた時に出会ったのがブランディングでした。
これまで培ってきたデザインの経験とブランディングという戦略を武器に、“Branding & Design” で、顧客の成長とファンづくりをお手伝いします。
・ 「東京ビジネスデザインアワード 2024」 テーマ賞受賞
・ 特許庁(独:INPIT)認定 デザイン専門家/ブランド専門家
・ 一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 トレーナー資格取得
・ 一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 1級資格取得
・ 一般社団法人ブランド・プランナー協会 2級資格取得
・ 公益社団法人 日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)会員
・ 東京都中小企業振興公社 デザイン経営スクール 第5期修了
《 ブランディング・サービス 》
・中小企業の「強み」を活かした新製品やサービスの開発サポート
・企業のブランドストーリーをカタチに 「ものがたりブランディング®」
・ブランディング入門サービス「3ステップ・ブランディング」
・ブランディング講座(入門コース/ベーシックコース)開催
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