みなさん、こんにちは。
ブランドデザイナーのホーリーです。
グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートして約30年。
主に企業の広告制作に従事してきました。2014年にブランディングと出会い、その「伝わる威力」に魅了されてから、今年で11年目となりました。
現在は、企業の「らしさ」を磨いて、デザインで「よりよく」伝える、ブランドデザイナーとして活動しています。
今回は、前回まで深掘りしてきた「ビジョン」(=目的地に旗印を立てること)を現実に変えるために欠かせない「ミッション」に焦点を当ててお話しします。できるだけ、自分らしく、わかりやすくお伝えできるよう心がけました。読んでいただけると嬉しいです。
そもそも「ミッション」とは何でしょうか。
ミッションとは、企業やブランドが果たすべき「存在意義」や「社会的な役割」を明文化したものです。一般的な定義では、ミッション(Mission)=「私たちは、なぜこの事業をしているのか?」に対する答えだとされます。
近年は「パーパス」という言葉に置き換えられることもありますが、その本質は変わりません。いずれも“存在意義の言語化”であり、突き詰めれば「なぜ私たちはここに存在するのか?」という根源的な問いに向き合うことです。
ビジョンが“未来の旗印”(どこへ向かうかという目的地)だとすれば、ミッションは“いま、ここで私たちが果たすべき役割”(なぜそれをやるのかという存在理由)と言えるでしょう。夢や理想を描くだけでは前に進めません。ミッションがあることで現場の行動に明確な意味が与えられ、ブランドは「ことば」から「実践」へと動き出すのです。
ミッションとは何か──存在意義を言葉にするということ
「ビジョンって、なんのためにあるのか?」ということを前回まで掘り下げました。では、そのビジョンを「現実」に変えていくために、いま私たちは何をすべきなのか。──その問いに応えるのが、今回のテーマである「ミッション」です。
ミッションはよく「使命」と訳されますが、それは単なる業務上の役割や“やるべきこと”を意味するのではありません。むしろ、「なぜこの企業が存在しているのか?」という存在意義そのものを言語化したものです。
たとえば、サントリーホールディングス株式会社が掲げる「人と自然と響きあう」は、その好例です。(現在は「パーパス」という表現へ刷新)この言葉には、単なる飲料メーカーの枠を超えた、深い倫理観と社会的責任が込められています。(出典:サントリー「グループ企業理念」)
ただし、ミッションは必ずしも大きな社会課題に挑む必要はありません。むしろ重要なのは「自分たちらしさ」をどう言葉にするかです。たとえば「お客さまが困ったときに真っ先に思い出してもらえる存在でいたい」といった想いも、立派なミッションになります。
実際にサントリーは、事業の根幹に「水」を据え、その恩恵に報いる形で全国の天然水の森を守る活動を続けています。これは「売上のためのCSR活動」ではなく、「企業が持つべき使命」として位置づけられた行動なのです。(出典:サントリー「天然水の森」)
つまりミッションとは、「企業が果たすべき社会的役割を、自らの言葉で定義すること」にほかなりません。それは顧客からの信頼や社員の誇り、社会との関係性を支える土台となり、ブランド全体を動かす軸となるのです。
「ミッション=使命」は、特別なものじゃなくていい
「ミッション」と聞くと、大企業の立派なスローガンや、理念のようなものを思い浮かべる方も多いかもしれません。でも、本来の「ミッション=使命」とは、もっと素朴で、もっと身近なものです。
たとえば:
・この街に、なくてはならない会社でいたい
・お客さまが困ったとき、真っ先に思い出してもらえる存在でいたい
・次の世代が働きたくなる会社を、自分たちの手でつくりたい
そんな想いも、立派な「ミッション」です。

大きな言葉じゃなくていい。「今、できること」から始めよう
中小企業にとってのミッションは、すぐに大きな社会課題を解決しようとか、かっこいい言葉を掲げる必要はありません。
大切なのは、「自分たちは何のためにこの仕事をしているのか?」「誰のために、どんな価値を届けているのか?」という“原点”を言葉にしてみること。
たとえば:
・お客さまの「ありがとう」をもっと増やすには?
・地元の人たちに、どんな風に役立てているか?
・社員の子どもたちに、どんな背中を見せたいか?
こうした問いから、小さな一文をつくってみるだけでも、立派な一歩になります。
中小企業だからこそ、等身大の言葉で
中小企業の強みは、背伸びをせず“自分たちらしい言葉”で、すぐに動けることです。難しく考えすぎず、「ちょっと考えてみようか」くらいの気持ちで始めれば十分。その小さな一歩が、やがて会社の大きな軸へと育っていきます。
そして何より大切なのは、ミッションが“誰かから与えられる”ものではなく、“自分たちで選び取る”ものであるということです。中小企業の規模感では、トップダウンでつくられた言葉は、どれほど美しくても、現場にはしっくりこないことが多いように感じます。
一方で、「自分たちはなぜこの仕事をしているのか?」「何を大切にしたいのか?」という対話を重ね、組織の内側から生まれたミッションは、どんなマニュアルよりも強力な行動のガイドになります。
ミッションとは、自分たちの存在価値を問い直し、「この役割を担うことにこそ意味がある」と胸を張れる“選択のことば”。だからこそ、ビジョンを掲げるだけでなく、「それをどう実現するのか」を日々の行動に結びつけるために、ミッションが必要なのです。
次回は、実際に行動の軸をつくる「ミッション」を定めるステップをご紹介しながら、もう一歩深く掘りさげていきたいと思います。
つづく
プロフィール
Branding & Design TOYPLOT 代表
ブランドデザイナー ホーリー
1974年生まれ、大阪府出身。
デザインの専門学校を卒業後、数社の広告制作プロダクション勤務を経て、2010年3月独立。
TOYPLOTでは、企業のブランディング及び広告・デザイン制作のご依頼をいただいて活動しています。
これまで多くの広告制作に従事してきましたが、その過程でデザインだけでは解決できなかった課題も少なからずありました。制作したデザインで、クライアントの“想い”や“魅力”をお客さまに伝えきれているのか?と、もやもやとした思いを抱えていた時に出会ったのがブランディングでした。
これまで培ってきたデザインの経験とブランディングという戦略を武器に、“Branding & Design” で、顧客の成長とファンづくりをお手伝いします。
・ 「東京ビジネスデザインアワード 2024」 テーマ賞受賞
・ 特許庁(独:INPIT)認定 デザイン専門家/ブランド専門家
・ 一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 トレーナー資格取得
・ 一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 1級資格取得
・ 一般社団法人ブランド・プランナー協会 2級資格取得
・ 公益社団法人 日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)会員
・ 東京都中小企業振興公社 デザイン経営スクール 第5期修了
《 ブランディング・サービス 》
・中小企業の「強み」を活かした新製品やサービスの開発サポート
・企業のブランドストーリーをカタチに 「ものがたりブランディング®」
・ブランディング入門サービス「3ステップ・ブランディング」
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