




先月、青梅市・あきる野市を拠点とするプロ野球独立リーグの新球団「東京レジデンシャル(仮称)」の立ち上げと、両市との地域活性化やスポーツ振興に関する包括連携協定の締結が話題となりました。
多摩地域で初となるプロ野球独立リーグの新球団誕生は、これまでサッカーやバスケットボール、ラグビーを中心に広がってきた多摩地域のプロスポーツによる地域振興が、さらに進んでいく契機と言えます。
この「プロスポーツ×地域」の流れが企業の採用活動やブランディングにも影響を与え始めています。
そこで今回は、プロスポーツ×地域が、「この会社で働きたい」を生み出す理由についてお伝えします。
目次 ➖
1. いつも応援しているチームの会社だったから
実際に、こんな事例がありました。
私自身、就職先を探している学生から相談を受け、Bリーグクラブのスポンサー企業を紹介したことがあります。その学生は後日、次のように話してくれました。
「いつも応援しているチームのスポンサー企業だったので、親近感がありました。それに、ホームゲーム会場で企業紹介ブースを出していて、どんな会社なのかを直接知ることができました。会社の雰囲気が分かったので、不安はありませんでした。だから、その会社に就職を決めました」
企業名を“知っていた”のではなく、企業を“理解していた”からこそ就職を決めたと言える事例です。
2. スポンサーシップが生む「事前接触点」
プロスポーツクラブのスポンサーになることで、企業は試合会場や地域イベント、公式SNSなどを通じて、求職者との「事前接触点」を持つことになります。
ユニフォームで見たことがある、会場で話を聞いたことがある、地域イベントで社員の姿を見たことがある――こうした体験の積み重ねが、「知らない会社」から「知っている会社」へと認識を変えていきます。
3.多摩地域に根付く多様なプロスポーツクラブ
現在、多摩地域には次のようなクラブが活動しています。
◆ Jリーグ
東京ヴェルディ/FC町田ゼルビア/FC東京
◆ Bリーグ
東京八王子ビートレインズ/立川ダイス
◆ ラグビー・リーグワン
日野レッドドルフィンズ/東芝ブレイブルーパス東京/東京サントリーサンゴリアス/クリタウォーターガッシュ昭島
◆ プロ野球独立リーグ(BCリーグ準加盟)
東京レジデンシャル(仮称)
◆ その他
立川アスレティックFC(フットサル)
東京ヴェルディビーチサッカー(ビーチサッカー)
DIOREX TOKYO(3人制バスケットボール)
競技や規模の異なるプロスポーツが同時に存在している点は、多摩地域の地域資源として大きな価値を持っています。
4.地域課題を解決するスポンサーシップが共感が生む
プロスポーツクラブへのスポンサーシップは、企業認知にとどまりません。
地域課題の解決に正面から向き合う取り組みが、住民の共感を呼び、その企業に対する信頼や親近感を育てていくケースもあります。
ここでは、当時私が東京ヴェルディの営業担当として関わった、日野市・エムール・東京ヴェルディの三者による協働事例をご紹介します。
5. 「ごみゼロマンヴェルディ」が生んだ、地域に愛される活動

きっかけは、私が担当していた日野市ごみゼロ推進課からの相談でした。
「ごみ減量啓発活動を、日野市内の幼稚園や保育園、地域イベントなど、もっと幅広い世代に届けていきたい。そのために、子どもたちにも親しみやすい新しい取り組みができないか」
この相談を受け、2012年に日野市と東京ヴェルディが協働し、緑を基調としたキャラクター『ごみゼロマンヴェルディ』が誕生しました。
「もったいない」を合言葉に、不用品を再利用して作られたこのエコヒーローは、出前授業や地域イベント、ホームゲームでの来場者対応、試合後のスタジアム清掃活動などを通じて、子どもから大人まで参加できる環境教育を体現してきました。
その結果、日野市は1人1日あたりのごみ排出量が全国最少クラスという実績を、複数年にわたって達成しています。
東京ヴェルディのチームカラーである緑をまとったごみゼロマンヴェルディは、「日野市」「環境」「スポーツ」を一つの物語として伝える存在として、地域に定着していきました。
6.エムールが示した「応援のかたち」
この活動をさらに広げるため、私は日野市で事業を展開し、東京ヴェルディのスポンサーである株式会社エムールに協力を相談しました。
すると、高橋社長から返ってきたのは、次の言葉でした。
高橋社長から返ってきたのは、「それは、ぜひ応援したい。地元の日野市のことですし、ごみ減量啓発という活動自体にも強く共感します」という言葉でした。
広告ではなく、共感を伝える協賛


エムールが選んだ支援の方法は、ロゴを前面に出す広告的なものではありませんでした。
エムールのキャラクターである「レムちゃん」が描かれたシールに、「エムールは日野市のごみゼロ推進運動を応援します」というメッセージを添え、出前授業などに参加した子どもたちへ配布したのです。
このかわいらしいキャラクターのシールは子どもたちに大変喜ばれ、同時に「ごみを減らす3つの約束」を伝える教材としても高い教育的価値を持ちました。
さらに、ごみ減量啓発活動に携わるスタッフが着用するジャージには、レムちゃんのキャラクターをプリント。単なる広告としての露出ではなく、「ごみを減らす運動を応援する企業である」という明確なメッセージを伝える協賛の形でした。
共感が「働いてみたい」を生む
こうした取り組みは、地域住民や東京ヴェルディのファン・サポーターから
「エムールって、いい会社だよね」「地域のことを本当に大事にしている企業だよね」という評価につながっていきました。
スポンサー企業が地域課題に真摯に向き合う姿勢は、
確実に人の心を動かし、「この会社で働いてみたい」という感情の土壌を育てていきます。
7.スポンサーシップは「物語」をつくる仕事
日野市×東京ヴェルディ×エムール
この三者の取り組みは、スポンサーシップが単に広告枠を購入する行為ではなく、地域と企業、そして人をつなぐ「物語」を共につくるパートナーシップであることを示しています。
その物語に触れた人は、企業の姿勢に共感し、やがて顧客となり、ファンとなり、時には「この会社で働いてみたい」と感じる存在になっていきます。
8.多様なプロスポーツクラブが、企業のスポンサーシップの選択肢を広げる
多摩地域には、競技や規模、活動スタイルの異なるプロスポーツクラブが数多く存在しています。
クラブが多様であるからこそ、スポンサー制度や協賛の関わり方も一律ではなく、企業の規模や目的に応じた選択肢が生まれています。
今後、こうしたプロスポーツクラブの活動がさらに深化してくことは、企業にとって「スポンサーになる機会が増える」だけでなく、共感を軸にしたスポンサーシップを選べる環境が広がっていくことを意味します。
9.採用は「選ばれる理由づくり」の時代へ
採用環境が厳しさを増すなか、これからの中小企業に求められるのは、条件競争に加えて選ばれる理由をどうつくるかという視点です。
プロスポーツクラブへのスポンサーシップは、その理由を自然な形で伝える有効な手段になり得ます。
「応援しているチームの会社だったから」この一言が、就職の決め手になる時代は、すでに始まっています。
プロフィール
梅澤 朗広
SDGusサポーターズ株式会社 代表取締役
日本JC公認SDGsアンバサダー
FC NossA八王子 アドバイザリーボード
大切にしている価値観:感謝・貢献・共創
野村證券、東京ヴェルディを経て2019年にSDGusサポーターズ株式会社を設立。SDGsの「持続可能な社会の実現」「誰一人とりのこさない」の理念に共感し、企業に対してCSV(共通価値の創造)の観点で事業活動と社会活動の両立に向けた経営サポートをおこなっています。SDGsと自社の活動に対する理解を深めてアクションを考えるワークショップや、様々なパートナーと連携して営業・広報・採用のサポートをおこなっています。
SDGsについて興味を持っている・相談したいなど、ぜひコチラにお気軽にお問合せください。

