皆様、このコラムをご覧いただき、ありがとうございます。今般TAMA WORKのコラムページで情報発信させていただきます中小企業診断士の飛田光雄です。この経営力向上シリーズの初回では、ダーウインの「変化への対応ができる者だけが生き延びる」という進化論の原則をキーワードとしてスタートさせていただきました。
そして、社会変化の実例としてインバウンド観光客数がこの10年で3倍になっていること、また、東京都在住の外国人数がこの10年で約28万人急増している状況を説明させていただきました。新規ビジネスチャンスの観点、また人手不足対策の観点など、この変化について、皆さん色々感じるところがお有りでしょう。
そこで今回は経営力向上に繫がる豆知識として、作家の童門冬二さんの言葉を二つご紹介します。その上で、前回の情報を活用できる東京都の外国人雇用・育成に関する助成金に触れさせていただきます。
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黒田官兵衛の「異見会」(2019年の童門冬二インタビュー記事より)
昨年1月96歳で亡くなられた作家の童門冬二は、51歳で退職して作家活動に入るまでは、東京都庁の幹部として広報室長、企画調整局長、政策室長などを歴任しています。この経験から、「上杉鷹山」を始めとした多くの著作物の中で、経営のヒントになるような素晴らしい言葉を残しています。
その一つとして、2019年のインタビュー記事で、童門冬二は黒田官兵衛について以下のように言っています。
「軍師として知られた福岡藩祖の黒田官兵衛は、『異見会』というものを福岡城内で開いていました。これは藩政に関する討論会なのですが、ヒラの上層部の批判も許した。『意見』ではなく『異見』で、『上意下達』ではなく『下異上達』を目的にしていたのです。
官兵衛は幹部らに『どんなに批判されても腹を立てるな、笑顔で応ぜよ』と命じていたので、『腹立てずの会』とも呼ばれていました。(中略)官兵衛は、『神に対する過失は、祝詞やお経を上げて謝罪すれば許してもらえるだろう。しかし部下はそうはいかない。部下を傷つけたら、絶対に許しは得られない。民も同じだ』とまで言っているのです」。
この福岡藩の話は、現代の会社経営でも経営者が心がけて行くべきポイントをついているとは思いませんか?
童門冬二著「偉物伝=えらぶつでん=」(講談社文庫より)

この文庫本は、歴史上の人物11人を紹介することを通じて、今のIT社会に振り回されるのではなく、逆に振り回していただきたい(原文のママ)と著者はその前文で書いています。そして読者には、「誰にでもひそんでいる偉物=えらぶつ=の要素を発見」することを願っています。では「えらぶつ」というあまり聞き慣れない言葉はどういう意味なのでしょうか?この本の前文から抜粋します。
「歴史上の人物には、“偉人”(いじん)と“偉物”(えらぶつ)がいる。――中略――
しかし、偉物というと――中略――ただエライ人といいきれない味がある。この味とはなんだろう。
「あ・うんの呼吸のわかる人」 「人生意気に感じるひと」 「以心伝心の達人」
などがその材料だ。世の中にはいろいろなタイプの人間がいる。
・いくらいってもわからないヤツ
・よく説明すればわかるヤツ
・いわなくてもすぐわかるヤツ
偉物とは最後の、「いわなくてもすぐわかるヤツ」のことである。そしてそれは当人だけの資質ではない。相手やまわりの人間に対しても、「いわなくてもわからせることのできるヤツ」のことだ。――中略――会った人間に、たちまち、
「このひとのいうことなら」 「このひとのやることなら」と、信じさせ、その気にさせてしまうムードの持ち主のことだ。この“なら”と思わせる〝気“(オーラ)を風土というのだそうだ――以下省略――」
童門冬二著「偉物伝=えらぶつでん=」(講談社文庫より)
いかがですか?経営改善というと企業風土の改善やコミュニケーションが話題になることも多いのですが、童門冬二の言う「えらぶつ」は、あなたの「こうありたいという姿」の参考になりませんか?
外国人従業員に対する研修等支援助成金をご存知ですか?

前回のコラムで、近年東京都の在住外国人として、中国人だけでなく、ベトナム人・ネパール人・フィリピン人等が急増していることを記載しました。これは、定常化してきている人手不足対策として、色々な業種で外国人従業員を採用していることが背景にあります。皆さんにも、多分人材紹介会社からの外国人斡旋案内があると思いますが、なかなか本格的に検討することに踏み切れないのではないでしょうか?
それは日本語のコミュニケーションや長期定着性、あるいは宗教・文化の違いに不安があることが一因です。もしかしたら、既に外国人従業員を雇用しているが、いずれその外国人従業員が帰国した場合の交代要員に不安がある事業者さんもあるかもしれませんね!この点、東京都では、中小企業における外国人従業員の定着を促進するとともに、ウクライナ避難民の就労を後押しすることを目的として、「日本語教育等に要する経費を助成する事業」を実施しています。令和7年度の募集受付は既に始まっていますが、令和8年1月末まで本年度の申請は可能です。
助成の対象は、外国人従業員(日本語能力試験概ねN2レベル以下=N2は日常会話以上ビジネスレベル未満=)を対象とした、ビジネスに必要な日本語教育、日本語教材作成、ビジネスマナー講座、異文化理解の講座です。一般コースの標準プランで助成率二分の一、助成額25万円まで、ウクライナ難民コースは助成率100%、標準プランで助成額50万円までです。
TAMA WORKは多摩地域に特化した求人サイトですが、日本語学校で勉強している外国人や、大学で勉強している中国人など留学生で日本での就職を希望している人々が、このサイトを見る機会が今後増えるかもしれませんし、もしかしたらあなたの会社にそのような外国人から問い合わせがあるかもしれません。
そんなときに、東京都の上記助成金による外国人従業員定着支援の活用が可能なことを知っていれば、採用可能性をより柔軟に検討いただけるのではないでしょうか?あなたの会社が、人的経営資源の確保について、より多様な検討を行ない、より一層発展いただけることを期待しています。
プロフィール
中小企業診断士 草の葉コンサルテイング代表
飛田 光雄
国内外の豊富な事業経験と、中小企業診断士としての専門知識を融合・活用して、中小企業の起業前の創業計画策定から開業、経営改善、事業拡大、トラブル処理などの実践的経営支援を行なっている。
1946年東京都武蔵野市生まれ。一橋大学法学部卒業。ミシガン大学ビジネススクールエグゼクティブコース修了。
帝人株式会社を常務理事法務室長で退任。その間韓国SKグループに約5年出向。海外事業、化成品事業、経営法務全般を担当。社外活動は日本経団連経済法規委員会委員、経営法友会理事等。
2008年コンサルタント活動開始。ジェトロ新興国進出支援専門家、多摩西部コンサルタント協会副代表理事、東京都よろず支援拠点コーディネーター、稲城市商業活性化プラン策定事業受託責任者、多摩市緊急経営相談事業受託責任者等を歴任。
得意分野:経営戦略、マーケティング、創業、事業承継、経営改善等。
支援業種:飲食業、サービス業、製造業、小売業、卸売業、建設業等。これらの分野と業種でコロナ前は各種支援機関で多数のセミナーや月30件以上の個別相談を実施。また、各種の補助金・助成金につき多数の申請支援を行っている。コロナ以降は、事業者のニーズ変化に対応し、長期継続支援に重点をシフトして現在に至る。