皆様、このコラムをご覧いただき、ありがとうございます。今般TAMA WORKのコラムページで情報発信させていただきます中小企業診断士の飛田光雄です。コロナ禍を契機に、大きな社会変化がありましたし、最近はAI活用の普及に伴うデータセンター新設ブームなど、ビジネス面も急速な変容があります。そこで、このコラムでは「環境変化への対応」を主たるテーマとして、このコラムをご覧いただく皆様に対して、少しでも経営力向上に繫がる基礎知識や新しい動向、また政府や自治体等の支援策などについて掲載させていただきます。
環境変化への対応
私が色々な機会でセミナー講師をするときに、良く使用するのが以下の図ですが、まさにこれが今回のコラムの主たるテーマである「環境変化への対応」ポイントを示していると言えましょう。
日本を代表する音楽指揮者として数々の業績を残した小澤征爾氏と、著名な数学者である広中平祐氏の対談が新潮文庫になっているのですが、その中に「我々に最も必要なのはナイーブな精神とオリジナリティ、即ち『柔らかな心だ』」という言葉があります。経営者の方々も、また私のような支援専門家も、ともすれば自分の経験と知識に囚われて、自由な発想ができない嫌いがありますが、それに拘ると東日本大震災やコロナ禍のような予期せぬ事態が発生した時に、迅速かつ適格に対応できない怖れがあります。

また、うまく行かない事態が起こった場合に、逃げて言い訳していては、事業の成功・変革・発展はおぼつきません。起こっている事態に正面から向き合い、自由な発想で柔軟な対応を実現することこそが、あなたの事業を持続的発展に繋げることができるのです。
少し古い私の経験談になりますが、東京都商工会連合会関係の仕事で、工事会社T社のT代表取締役にインタビューした際のことです。この時点でT代表取締役は多摩地区某地域の商工会の会長もしておられたのですが、冒頭に話されたことが大変印象的でした。
即ち「私はこの地域の商工会会長として、『変化への対応ができるものが生き延びる』というダーウィンの原則を常に話している。変化を見極めることが重要で、先走ってはいけないが、乗り遅れてもいけない。引きこもり企業にならずに、外に出て行くことが必要。事業承継についても、後継者がいるなら早めに後継教育すれば事業を継続可能である。この点は、高齢化の波の中で、先送りしてはいけないことと考えている。」との非常に示唆にあふれた発言でした。
この言葉が今でも私の記憶に残っているので、今回のテーマを選択したのです。
社会環境変化の実例
今回は、インバウンドと東京在住外国人数が、この10年でどのように変化したか追跡してみましょう。日本政府観光局は、2024年の年間訪日外国人数を36,869,900人と発表しました。勿論この訪日外国人数は過去最高です。なお、この人数は、外国人正規入国者から日本を主たる居住国とする永住者等の外国人を除き、これに外国人一時上陸客を加えた入国外国人旅行者の人数です。従って、駐在員やその家族、留学生等の入国者および再入国者は訪日外国人に含まれるのでご注意ください。
それでは10年前の2014年の訪日外国人数はどの位だったかというと、13,413,600人でした。実にこの10年で訪日外国人数は3倍近く増加しており、2025年には確実に3倍以上になると見込まれます。その間中国人旅行者による爆買い現象があったり、交通インフラが不足して地元住民がバスに乗れないとか、日本食やショッピング等のもの消費からスキーや日本文化の体験などのこと消費への変化など、外国人観光客の欲求やそれを取り巻く課題にも大きな変化があります。良きにつけ悪しきにつけ話題になることが極めて多くなっていますが、そんな中でインバウンド需要を実際のビジネスに活かスチャンスをつかめているでしょうか?

大きなビジネスチャンスに?
外国人に関する話題で、多摩地区の事業者さんにも大きなビジネスチャンスがあるかもしれないのが、実際に東京都に住んでいる外国人です。皆さんは東京都にどの位の外国人が住んでいるかご存じですか?インバウンド同様、2015年を基準として東京都の統計を確認すると、当時の東京都在住外国人居住者総数は440千人でした。
これを国別にみると、
第1位 中国人:181千人
第2位 韓国人:93千人
第3位 フィリピン人29千人
第4位 ベトナム人:20千人
第5位 米国人:16千人
これが本年1月現在どうなっているかというと、東京都在住外国人居住者総数は721千人に急増しています。
国別では、
第1位 中国人:281千人(100千人増加)
第2位 韓国人:90千人(微減)
第3位 ベトナム人:53千人(33千人急増)
第4位 ネパール人:49千人(14千人増加)
第5位 フィリピン人:37千人(8千人増加)となっています。
米国人は21千人と若干増加しましたが、人数順位では8位に落ち込みました。注目されるのは、圧倒的に中国人の増加人数が多いことと、ベトナム人とネパール人の急激な増加です。人手不足現象が続く中で、建設業界などでベトナム人やネパール人の活用が進んでいるようです。
プロフィール
中小企業診断士 草の葉コンサルテイング代表
飛田 光雄
国内外の豊富な事業経験と、中小企業診断士としての専門知識を融合・活用して、中小企業の起業前の創業計画策定から開業、経営改善、事業拡大、トラブル処理などの実践的経営支援を行なっている。
1946年東京都武蔵野市生まれ。一橋大学法学部卒業。ミシガン大学ビジネススクールエグゼクティブコース修了。
帝人株式会社を常務理事法務室長で退任。その間韓国SKグループに約5年出向。海外事業、化成品事業、経営法務全般を担当。社外活動は日本経団連経済法規委員会委員、経営法友会理事等。
2008年コンサルタント活動開始。ジェトロ新興国進出支援専門家、多摩西部コンサルタント協会副代表理事、東京都よろず支援拠点コーディネーター、稲城市商業活性化プラン策定事業受託責任者、多摩市緊急経営相談事業受託責任者等を歴任。
得意分野:経営戦略、マーケティング、創業、事業承継、経営改善等。
支援業種:飲食業、サービス業、製造業、小売業、卸売業、建設業等。これらの分野と業種でコロナ前は各種支援機関で多数のセミナーや月30件以上の個別相談を実施。また、各種の補助金・助成金につき多数の申請支援を行っている。コロナ以降は、事業者のニーズ変化に対応し、長期継続支援に重点をシフトして現在に至る。