TAMA WORKをご覧の皆さん、こんにちは。採用定着士/社会保険労務士の高木です。
「採用と定着で中小企業の発展を支援する」をミッションとして、多摩地域を中心とした中小企業のサポートをさせていただいております。
この記事では「せっかく採用したのに…を防ぐ!社員が定着する職場づくりのポイント」と題して、
「採用はできたが、すぐ辞めてしまう・・・」
「定着率を上げたいが、どうしたらよいかわからない・・・」
といった人材定着にお悩みを持つ中小企業経営者、人事担当者、管理職の皆さんに役立つ内容を連載でお届けしています。
第9回目は「社員のやる気を高め、成長につなげる評価制度の作り方」についてお伝えします。
はじめに

「評価制度なんて難しいものはうちの会社には無理だよ」
そうおっしゃる中小企業経営者の方にこそ、ぜひ知っていただきたいのが、社員のやる気や定着に大きな影響を与える評価制度の仕組みです。
評価制度というと、点数をつけて昇給や賞与に反映する、というイメージが強いかもしれません。しかしそれだけではなく、社員一人ひとりの成長を支援し、日々の仕事ぶりを認め、会社として期待する姿へ導いていくための“コミュニケーションツール”でもあります。
今回は、中小企業でも導入しやすい評価制度の考え方と設計のポイントをご紹介します。
1.評価制度の目的とは?

まずは、評価制度を導入する目的を整理しましょう。主な目的は次の3つです。
①処遇の差に納得感を与えること
昇給や賞与の根拠が不明確だと、社員の間で「頑張っても報われない」と感じる原因になります。評価制度は、処遇に対する納得感を生み出します。
②社員の育成と成長を支援すること
どこを伸ばせばよいのか、何を期待されているのかがわかることで、社員自身も成長に向けた行動がとりやすくなります。
③上司と部下のコミュニケーションを活性化すること
評価という形で定期的に面談をする場があると、日頃の業務の方向性や課題の共有にもつながり、上司のマネジメント力も高まります。
2.評価制度はキャリアパスと連動する
前回の連載でお伝えした「キャリアパス」は、社員が自分の将来像を描き、成長の方向性を知るためのものです。
そのキャリアパスで定めた“役割”や“期待される能力・スキル”が、評価制度において「何を評価するか」を決める基準となります。つまり評価制度は、キャリアパスが描く成長ルートの中で、今の自分がどの位置にいるのか、求められていることに応えられているのかを確認する“現在地のチェック機能”として重要な役割を果たします。
3.何を評価するのか? ~3つの観点~
評価の要素は、様々なものが考えられますが、私は以下の3つの要素を用いることを推奨しています。
① 成績(成果)の評価
業績や成果は、社員にとって最もわかりやすい評価対象のひとつです。
売上や完了件数などの定量的な指標で測定できる業務では、目標の達成度を明確に評価できます。
一方で、業務内容によっては数値で成果を表しにくい場合もあります。その場合は、たとえば、「○○の作業を上司の手を借りずに一人でこなせるようになっている」など、状態の達成を基準とした目標を設定することで、成果を見える化できます。
このように、目標を明確にすることで社員の自律的な行動を促す仕組みが「目標管理」です。
目標を立てることで、完遂までの具体的な行動計画を立てやすくなり、行動を起こす中で生じるギャップや課題にも早い段階で気づき、解決していくことができます。その結果、日々の業務に目的意識が生まれ、最終的にはより大きな成果を実現しやすくなるのです。適切な目標を設定するのは簡単ではありませんが、成果に対する納得感と成長実感を得られる効果的な仕組みです。
② 行動評価(コンピテンシー評価)
成果だけでなく、成果につながるプロセスである日頃の行動も評価対象に含めることが重要です。
ここで有効なのが「コンピテンシー」を活用した評価です。
コンピテンシーとは、「成果を上げている人に共通した行動特性」のことを指します。
たとえば、
・丁寧な報連相をしている
・周囲に気配りして行動している
・トラブルに対して前向きに対応している
といった、自社で成果を上げている人に共通する行動を評価項目とします。
③ スキル評価
職種や立場に応じて、求められるスキルや知識は異なります。
そのため、職種・階層ごとにスキルマップを作成し、段階的に評価できる仕組みを取り入れると効果的です。
スキルマップとは、各業務について「このスキルがこのレベルまでできる」といった熟達度を整理した表です。たとえば製造職であれば「〇〇機器を扱える」「工程管理ができる」、営業職であれば「ニーズのヒアリングができる」「見積書を自力で作成できる」など、具体的なスキルをレベル別に分けて示します。
このように整理することで、社員自身が「次に目指すステップ」が明確になり、成長意欲を高めると同時に、上司も育成しやすくなります。
まとめ

評価制度は、社員が今どこに立っているのかという“現在地”を確認しながら、これからどのように成長し、どの方向に進んでいけばよいかという“未来の道筋”を示すものです。
何を期待されているのか、何を頑張れば評価されるのかが明確になれば、社員は自ら考え、前向きに成長しようとするようになります。そしてその積み重ねが、会社全体の成長と定着につながっていきます。
難しい制度は必要ありません。
「社員の成長を応援し、会社も一緒に成長したい」――
そんな想いから始まる評価制度こそが、社員にとっても会社にとっても、本当に価値ある仕組みになるはずです。
プロフィール
社労士事務所CRAFT 代表
採用定着士/特定社会保険労務士 高木 厚博(たかぎ あつひろ)
1974年大阪生まれ。私立清風高校、関西大学法学部卒業。大手外食企業にて、店舗管理等を経験。
退職後バイトをしながら試験勉強をし、社会保険労務士試験合格。地域最大級の社労士事務所に勤務。約15年勤務したのち2019年11月独立開業。顧問先企業の人事・労務の課題解決に取り組む一方、「採用と定着で中小企業の発展を支援する」をミッションに、採用支援、賃金制度・評価制度構築、「パワハラ予防研修」や「承認力向上研修」などの社内研修で中小企業の社員の定着・育成を支援している。
金融機関、商工会議所主催セミナーなど講演実績多数。パワハラ予防士。承認ファシリテーター。
著書「うちはいい会社です!と社員から言われる就業規則25のチェックポイント」(共著、泉文堂)。
NHK総合テレビ「おはよう日本」『103万の壁 企業の足かせ』出演。
好きな飲み物:よなよなエール 好きな食べ物:天下一品こってり
【連絡先】
〒206-0002 東京都多摩市一ノ宮1-26-7 ラミアール聖蹟508

