「採用定着士」高木厚博のせっかく採用したのに…を防ぐ!社員が定着する職場づくりのポイント #7

毎月第1週の木曜日に発信 <第7回>社員が育ち、定着する!「承認」があふれる職場づくりのポイント

この会社の特徴

<第7回> 社員が育ち、定着する!「承認」があふれる職場づくりのポイント

TAMA WORKをご覧の皆さん、こんにちは。採用定着士/社会保険労務士の高木です。
「採用と定着で中小企業の発展を支援する」をミッションとして、多摩地域を中心とした中小企業のサポートをさせていただいております。
この記事では「せっかく採用したのに…を防ぐ!社員が定着する職場づくりのポイント」と題して、
「採用はできたが、すぐ辞めてしまう・・・」
「定着率を上げたいが、どうしたらよいかわからない・・・」
といった人材定着にお悩みを持つ中小企業経営者、人事担当者、管理職の皆さんに役立つ内容を連載でお届けしています。
第7回の今回は「社員が育ち、定着する!「承認」があふれる職場づくりのポイント」についてお伝えします。






はじめに ~なぜ今「承認」が必要なのか~

「せっかく採用した社員がすぐに辞めてしまう」という悩みを抱える企業が増えています。待遇や制度だけでは人は定着せず、職場での人間関係や心理的安全性がますます重視される時代になっています。

その鍵を握るのが「承認」です。社員の行動や存在に「気づいている」「見ている」「価値がある」と伝えることが、社員の安心感とエンゲージメントを高め、定着と成長につながります。

承認は、給与や制度では満たせない“心の報酬”です。今回は、「承認」の効果や正しい伝え方、職場に根づかせるための工夫についてお伝えします。

1.「承認」がもたらす3つの効果

承認とは、相手の存在・行動・努力・成果などに対して「気づいている」と伝えることです。給料や制度といった「金銭的報酬」では満たせない「心理的報酬」として、働く人の満足度やモチベーション、ひいては定着率に大きな影響を与えます。以下のような効果が期待できます。

(1)安心感と信頼関係の構築

「見られていない」「評価されていない」と感じる職場では、社員は不安になります。逆に、「自分の努力を誰かが見てくれている」と思える職場では、安心して挑戦できるようになります。

これはいわゆる「心理的安全性」(※自分の意見や感情を安心して表現できる状態)を生み出す土台でもあり、承認はその第一歩です。

(2)意欲と行動の強化

承認は「報われた」という感覚を生み出します。

特に、行動や工夫のプロセスに対する承認は、「あのやり方でよかったんだ」と自信を生み、行動を継続する力になります。上司や同僚からの一言が、社員の背中を押し、前向きな行動を引き出します。

(3)エンゲージメントと定着の向上

エンゲージメントとは、「自分の仕事や職場に対して愛着と貢献意欲をもっている状態」を指します。これは単なる満足度とは異なり、「この会社のために自分も力を尽くしたい」と思える主体的な関わりです。

承認されることで、自分が組織の一員であり、必要とされていることを実感でき、エンゲージメントが高まります。これはそのまま、職場への定着意欲やパフォーマンス向上へとつながります。

2.効果的な承認のしかた

(1)承認の3つの種類を知る

①存在承認:「おはよう」「お疲れさま」など、相手の存在を認める日常の声かけ。
②行動承認:「細かいところまで気が付いていて助かるよ」など、努力や工夫への評価。
③結果承認:「今月の目標達成、よく頑張ったね」といった結果に対する承認。

新人や中途採用者にとっては、まず「存在承認」や「行動承認」が大きな意味を持ちます。

(2)具体的・客観的に伝える

いつも「頑張ってるね」だけでは効果は限定的です。

「今日の納品書の確認、数字がしっかりチェックされていて正確だったね。助かったよ。」と、行動内容・成果・受けた影響を具体的に伝えることで、承認の実感が深まります。

また、本人が自覚していないような強みに気づいて伝えると、自信と成長意欲を引き出すことにもつながります。

(3)プロセスに注目する

結果だけでなく、そこに至る過程にも目を向けましょう。

「朝早くから準備してたよね」「ミスがあったけど、すぐにリカバリーしていたのを見ていたよ」といった声かけは、継続的な行動を促します。

(4)「I(アイ)メッセージ」で伝える

「(私は)助かりました」「(私は)感心しています」など、自分の感情を交えて伝えることで、押しつけがましくない自然な承認になります。

(5)意味づけして伝える

「あなたが細かいところまでチェックしてくれたから、チーム全体のミスを防げたよ」など、その人の行動がチームや会社全体にどう貢献したかを伝えると、承認の重みが増します。

3.承認を職場に根づかせる4ステップ

(1)経営層・管理職の行動変容から始める

まずはトップが「承認」の価値を理解し、率先して行動することが重要です。「ありがとう」「助かったよ」「よく頑張ってるね」など、日常の言葉に意識を向けましょう。

(2)1on1ミーティングで承認の場を確保する

定期的な1on1は、承認の絶好のタイミングです。目標管理や業務報告だけでなく、「最近よかったこと」「努力していた点」など、ポジティブなフィードバックを意識して組み込むことが効果的です。

1on1については連載第5回をご参照ください。

(3)メンター制度と連動させる

メンター制度は、日常の小さな承認を届けるうえでも有効です。「自分を見てくれている人がいる」という実感が、孤立を防ぎ、不安を軽減します。

メンター制度については連載第6回をご参照ください。

(4)チャットや日報などツールを活用する

対面だけでなく、ツール上でも承認は可能です。チャットの投稿に対する「いいね」の絵文字や簡単なコメントも、立派な承認です。特に現場が分かれていたり、リモート勤務が多い場合には、非対面での「見ている」というサインが重要になります。

まとめ

承認とは、「あなたのことを見ている」「あなたの努力を大切に思っている」というメッセージを言葉や態度で届ける行為です。

これは特別な制度ではなく、日々の職場の中で、誰もが今日から始められるものです。

まずは、今日一日、部下や社員の“いいところ”に目を向けて、何か一つ声をかけてみましょう。

その一言が、社員のやる気を育み、職場を変える第一歩になります。

プロフィール

社労士事務所CRAFT 代表
採用定着士/特定社会保険労務士 高木 厚博(たかぎ あつひろ)
1974年大阪生まれ。私立清風高校、関西大学法学部卒業。大手外食企業にて、店舗管理等を経験。

退職後バイトをしながら試験勉強をし、社会保険労務士試験合格。地域最大級の社労士事務所に勤務。約15年勤務したのち2019年11月独立開業。顧問先企業の人事・労務の課題解決に取り組む一方、「採用と定着で中小企業の発展を支援する」をミッションに、採用支援、賃金制度・評価制度構築、「パワハラ予防研修」や「承認力向上研修」などの社内研修で中小企業の社員の定着・育成を支援している。

金融機関、商工会議所主催セミナーなど講演実績多数。パワハラ予防士。承認ファシリテーター。

著書「うちはいい会社です!と社員から言われる就業規則25のチェックポイント」(共著、泉文堂)。
NHK総合テレビ「おはよう日本」『103万の壁 企業の足かせ』出演。
好きな飲み物:よなよなエール 好きな食べ物:天下一品こってり

【連絡先】

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