#23 PEST分析を「どう読むか」「どう戦略につなげるか」

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みなさん、こんにちは。
ブランドデザイナーのホーリーです。
グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートして約30年。
主に企業の広告制作に従事してきました。2014年にブランディングと出会い、その「伝わる威力」に魅了されてから、今年で12年目となりました。
現在は、企業の「らしさ」を磨いて、デザインで「よりよく」伝える、ブランドデザイナーとして活動しています。

今回は、前回に引き続き「外部環境要因」について、さらに一歩踏み込んで整理していきます。前回(Vol.22)は、ブランディングにおいて外部環境要因(マクロ環境)に目を向ける重要性と、その整理手法としてのPEST分析についてお話ししました。PEST分析は、戦略を考える前に立ち止まり、「変えられない前提条件」を確認するための視点です。
今回は、PEST分析を「どう読むか」「どう戦略につなげるか」という観点から整理してみたいと思います。


PEST分析は「全部を見る」必要はない

PEST分析というと、政治・経済・社会・技術の4項目をすべて洗い出さなければならない、と思われがちです。しかし実務において重要なのは、すべてを網羅することではありません。
業種・業態・事業フェーズによって、影響の大きい要因は異なります。
ある企業にとっては「技術」が最大の変化要因であり、別の企業にとっては「社会的価値観」の変化が本質的なテーマになることもあります。
PEST分析は、情報を増やすための分析ではなく、自社にとって意味のある環境変化を選び取るための整理だと捉えることが重要です。

マクロ環境は「事実」と「解釈」に分けて考える

PEST分析でよくある失敗が、ニュースやトレンドを並べて終わってしまうことです。私が支援するワークの現場でも、よく目にする光景です。
例えば、「AIが普及している」「物価が上がっている」「価値観が変わっている」これらはすべて“事実”です。
しかし、ブランド戦略に必要なのは、それが自社にとってどのような意味を持つのかという“解釈”です。同じ環境変化でも、企業によっては追い風になり、別の企業にとっては逆風になることもあります。
PEST分析の価値は、環境変化そのものではなく、その変化と自社との関係性を考えることにあります。単に事実を並べるだけで終わらせず、そこから何を読み取るのか。その視点が、次の戦略につながっていきます。

PEST分析のアウトプットは「答え」ではない

PEST分析を行うと、多くの人が「では、何をすればいいのか?」と考えてしまいます。しかし、ここで注意したいのは、PEST分析は具体的な施策や答えを直接導き出すための分析ではないという点です。
PEST分析の本来の役割は、戦略を決めることではなく、戦略を考える前提条件を問い直すことにあります。
そのため、PEST分析の本来のアウトプットは「結論」ではなく、次のような「問い」です。

  • これまでの前提は、まだ通用しているだろうか
  • 自社の強みは、どの環境下で活きるのか
  • 戦うべき市場や顧客は変わっていないだろうか

こうした問いが立つことで、「自社」「顧客」「競合」をどう捉え直すべきかが見えてきます。
PEST分析は、3C分析やブランド戦略の前段にある思考整理なのです。

マクロ環境の変化は、脅威だけではない

外部環境の変化というと、多くの場合、リスクや脅威として語られがちです。法規制の強化、市場縮小、技術革新による競争激化など、確かに無視できない側面もあります。しかし、ブランディングの視点で捉えると、環境変化は必ずしもネガティブなものばかりではありません。むしろ、ブランドの役割や価値を見直すきっかけになることも多くあります。

社会の価値観が変わることで、これまで効率やスピードの陰に隠れていた価値が、改めて評価されることもあります。
たとえば、「なぜそうしているのかが説明できる背景」「手間や時間をかける理由が見えるプロセス」こうした“納得できる意味”は、以前よりも重視されるようになってきました。

価値観の変化は、新しい価値を生むだけでなく、
これまで見過ごされていた価値を浮かび上がらせる側面も持っています。

「読む・考える・決める」の順番を間違えない

ブランディングにおける思考は、次の順番で進みます。
① 読む
外部環境を読み、変えられない前提条件を整理する(PEST分析)
② 考える
その変化が自社にとってどんな意味を持つのか、前提を問い直す
③ 決める
市場・顧客・競合を捉え直し、ブランドの立ち位置や戦略を定める

この順番を間違えると、環境とズレた判断や、前提の浅い戦略につながりやすくなります。だからこそ、考える前に、読む。読む前に、決めない。この姿勢こそが、選ばれ続けるブランドづくりの土台になっていくのです。

さて、いかがだったでしょうか。
外部環境を「読む」ということは、未来を正確に当てにいくことではありません。変えられない前提条件を整理し、これまでの経営判断の前提が、いまも通用しているのかを確かめることだと私は考えています。
事実を集めて終わらせるのではなく、その変化をどう解釈し、次の戦略につなげていくのか。その視点を持ち続けることが、結果として、選ばれ続けるブランドにつながっていくはずです。

次回はいよいよ最終回。
ブランディングが中小企業経営にどんな影響を与えるのかを改めて整理したいと思います。どうぞお楽しみに。

プロフィール

Branding & Design TOYPLOT 代表
ブランドデザイナー ホーリー 
1974年生まれ、大阪府出身。
デザインの専門学校を卒業後、数社の広告制作プロダクション勤務を経て、2010年3月独立。

TOYPLOTでは、企業のブランディング及び広告・デザイン制作のご依頼をいただいて活動しています。
これまで多くの広告制作に従事してきましたが、その過程でデザインだけでは解決できなかった課題も少なからずありました。制作したデザインで、クライアントの“想い”や“魅力”をお客さまに伝えきれているのか?と、もやもやとした思いを抱えていた時に出会ったのがブランディングでした。
これまで培ってきたデザインの経験とブランディングという戦略を武器に、“Branding & Design” で、顧客の成長とファンづくりをお手伝いします。


・ 「東京ビジネスデザインアワード 2024」 テーマ賞受賞

・ 特許庁(独:INPIT)認定 デザイン専門家/ブランド専門家
・ 一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 トレーナー資格取得
・ 一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 1級資格取得
・ 一般社団法人ブランド・プランナー協会 2級資格取得
・ 公益社団法人 日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)会員
・ 東京都中小企業振興公社 デザイン経営スクール 第5期修了

《 ブランディング・サービス 》
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