ホーリーの選ばれるブランディング #16

毎月第4週の木曜日に発信

この会社の特徴

みなさん、こんにちは。
ブランドデザイナーのホーリーです。
グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートして約30年。
主に企業の広告制作に従事してきました。2014年にブランディングと出会い、その「伝わる威力」に魅了されてから、今年で11年目となりました。
現在は、企業の「らしさ」を磨いて、デザインで「よりよく」伝える、ブランドデザイナーとして活動しています。

今回は、「ビジョン」の描き方について深掘りします。できるだけ、自分らしく、わかりやすくお伝えできるように心がけました。お読みいただけると嬉しいです。


ビジョン」はどこから描けばいいのか?

では実際に、自社のビジョンを描くにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、比較的取り組みやすい「3つのステップ」をご紹介します。

ステップ1:原点に立ち返る(現在地と「想い」の再確認)

まず必要なのは、「なぜこの会社・事業が始まったのか」「何を理想としてきたのか」という原点を見つめ直すことです。創業のきっかけ、困難だった時期をどう乗り越えたか、そしてそれらを支えてきた信念はなにか?そこに、自社にしか描けない未来のヒントがあります。

これに関する良い実例があります。
皆さんは、株式会社ヘラルボニーという会社をご存じでしょうか。
【株式会社ヘラルボニー(Heralbony)】

創業の原点/想い
代表・松田崇弥氏は、自閉症の兄への差別や偏見に疑問を感じ、「知的障害のイメージを変えたい」との強い想いを抱きました。これが、福祉実験ユニット「ヘラルボニー」設立の出発点です。

困難と乗り越え
「障害=支援」ではなく「尊敬される存在」を目指し、作家の実態に合わせてライセンス契約方式などビジネスモデルを工夫し、前例のない課題に挑戦しています。

原点から行動へ
現在も、創業の想いは「作家の尊重」「アートで社会を変える」という文化になって深く根付き、社内文化や外部との関わりに貫かれています。

読者の皆さんはヘラルボニーをご存知でしたか?ヘラルボニーは「知的障害への偏見を変えたい」という創業者の兄への愛を原点に、ライセンス契約によるアートビジネスを展開している企業です。そして先日、その想いが世界でも高く評価されました。世界最高峰のクリエイティブの祭典「カンヌライオンズ」にて、「Glass: The Lion for Change」部門のゴールドを受賞したのです。
ちなみに、ヘラルボニーのミッションは「異彩を、放て。」です!

株式会社ヘラルボニー、世界最高峰のクリエイティブの祭典・カンヌライオンズにて「Glass: The Lion for Change」ゴールドを受賞

「Glass: The Lion for Change」は、カンヌライオンズの中でも特に「ブランドのパーパスを超えて、創造的なコミュニケーションを通じて文化を変革し、社会に変化をもたらし、世界にポジティブな影響を与えるクリエイティブ」を称える部門です。

出典:株式会社ヘラルボニー プレスリリース

ステップ2:社会との関係性を見つめる(誰に、どんな未来を提供するか)

次に考えるべきは、「社会や顧客とどんな関係性を築きたいか」という問いです。これは、自社のビジョンを「社内向けの理想」にとどめず、「社会に対する約束」として言語化するためのプロセスでもあります。

これに関する良い実例があります。
【パタゴニア(Patagonia)】

ビジョン・約束:
「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。」

解説:
環境保全を企業活動の中心に据えるパタゴニアは、単なるエコ活動ではなく、社会に対する明確な「スタンス」として掲げています。商品やマーケティング、企業運営すべてにおいて、このビジョンが軸になっており、社会との関係性は「消費者とともに地球環境を守る仲間」としての立ち位置です。

patagonia HP 「地球が私たちの唯一の株主


このように言葉にすることで、ビジョンは他者と共有可能な“約束”になります。

ステップ3:言葉を磨く(理念との整合と、一貫性のある表現)

最後に重要なのが、「そのビジョンを、誰にでも伝わる言葉で表すこと」です。難解な言い回しではなく、社員もパートナーもお客様も、一読して“なるほど”と納得できる、明快さと誠実さが必要です。よくある失敗は、「カッコよさ」ばかりを追い求めた結果、企業の実態と乖離したビジョンになってしまうケースです。言葉選びのポイントは、企業理念(パーパス)やミッションと整合が取れていること、そして現場の行動に落とし込める内容であることです。

これについて良い実例がないか、chatGPTに聞いてみました。
【Tesla(テスラ)】
ビジョン:「世界の持続可能なエネルギーへの移行を加速する」
【Amazon(アマゾン)】
ビジョン:「地球上で最もお客様中心の企業であること」
【Microsoft(マイクロソフト/創業時:ビル・ゲイツ)】
ビジョン:「すべてのデスクと家庭にコンピュータを」

誰にでも伝わる言葉でビジョンを語るとは、Teslaのように「行動」と「方向」がひとつの文で描かれていることが理想です。これは社内外に「次に何をするか」を明確に示し、判断基準になります。このように、「誰に/何を/どうする」を言葉で統一し、現場の行動にまで落とし込める表現が、伝わるビジョンの条件といえるでしょう。

「ビジョン」は、企業だけのものではない

ここまで「企業のビジョン」の描き方について触れてきましたが、これは会社組織だけの話にとどまりません。個人事業主やクリエイター、チーム単位のプロジェクトなど、どんなスケールでも「ビジョン=向かう未来」を定めることは可能です。ぜひ、皆さんも一度取り組んでみてください。




曖昧な時代だからこそ、ビジョンが必要

いま、私たちは「先が見えない」VUCA(ブーカ)と言われる時代に生きています。社会の不安定さ、働き方の多様化、技術の急速な進化。こうした変化の中で、人も組織も迷いやすくなっています。だからこそ、自分たちは「何のためにこの仕事をしているのか」「どんな未来を信じて進んでいるのか」を、言葉として持っているかどうかが、ますます重要になっています。
「ビジョンを描く」とは、単に企業の将来を定義することではありません。それは、チームの、社員一人ひとりの、そしてお客様の未来への希望をつなぐ行為でもあるのです。

VUCA(ブーカ)とは
VUCAという言葉は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの言葉の頭文字をとった造語です。
その意味は“社会環境・ビジネス環境の複雑性が増大する中で、想定外のことが起きたり、将来の予測が困難だったりする、不確実な状態”を指します。

出典:株式会社野村総合研究所

いかがでしたでしょうか。ビジョンとは、単なる理想ではなく、「私たちはどこへ向かうのか?」という目的地に、明確な旗印を掲げることです。その大切さについて、さらに理解を深めていただけたでしょうか?次回は、「ミッション」──ビジョンを実現するための“役割”について掘りさげていきます。どうぞお楽しみに。

つづく

プロフィール

Branding & Design TOYPLOT 代表
ブランドデザイナー ホーリー 
1974年生まれ、大阪府出身。
デザインの専門学校を卒業後、数社の広告制作プロダクション勤務を経て、2010年3月独立。

TOYPLOTでは、企業のブランディング及び広告・デザイン制作のご依頼をいただいて活動しています。
これまで多くの広告制作に従事してきましたが、その過程でデザインだけでは解決できなかった課題も少なからずありました。制作したデザインで、クライアントの“想い”や“魅力”をお客さまに伝えきれているのか?と、もやもやとした思いを抱えていた時に出会ったのがブランディングでした。
これまで培ってきたデザインの経験とブランディングという戦略を武器に、“Branding & Design” で、顧客の成長とファンづくりをお手伝いします。


・ 「東京ビジネスデザインアワード 2024」 テーマ賞受賞

・ 特許庁(独:INPIT)認定 デザイン専門家/ブランド専門家
・ 一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 トレーナー資格取得
・ 一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 1級資格取得
・ 一般社団法人ブランド・プランナー協会 2級資格取得
・ 公益社団法人 日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)会員
・ 東京都中小企業振興公社 デザイン経営スクール 第5期修了

《 ブランディング・サービス 》
・中小企業の「強み」を活かした新製品やサービスの開発サポート
・企業のブランドストーリーをカタチに 「ものがたりブランディング®」
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