ホーリーの選ばれるブランディング #15

毎月第4週の木曜日に発信

この会社の特徴

みなさん、こんにちは。
ブランドデザイナーのホーリーです。
グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートして約30年。
主に企業の広告制作に従事してきました。2014年にブランディングと出会い、その「伝わる威力」に魅了されてから、今年で11年目となりました。
現在は、企業の「らしさ」を磨いて、デザインで「よりよく」伝える、ブランドデザイナーとして活動しています。

今回は、「ブランディングの本質」につながるテーマとして「ビジョン」について深掘りしていきます。できるだけ、自分らしく、わかりやすくお伝えできるように心がけました。お読みいただけると嬉しいです。







「ビジョン」って、なんのためにあるのか

前回、「ブランディングの本質とは『知られる』ことの先にあり、『どう知られているか』の質にある」というお話をしました。その「どう知られるか」を左右する重要な要素のひとつが、今回のテーマである「ビジョン」です。
「ビジョン」とは、企業やブランドが描く理想の未来像のこと。よく“将来像”とも言われますが、それは単なる夢や願望ではなく、組織の志と戦略をもとに描かれた、未来への道しるべ。
明確なビジョンがあることで、社員一人ひとりの判断や行動に一貫性が生まれ、社内外の信頼構築にもつながっていきます。反対に、ビジョンが曖昧な組織は、短期的な成果に追われがちで、本来の目的を見失いやすくなります。
つまりビジョンとは、ブランドが目指す未来に掲げる“旗印”であり、そこへ迷わず進むための“指針”でもあるのです。

「ビジョン」は、目的地に旗印を立てること

組織におけるビジョンとは、単なる理想像ではなく、「私たちはどこへ向かうのか?」という目的地に、明確な旗印を掲げることです。その旗が立っていることで、人は迷わずそこを目指すことができ、判断や行動の軸が揃っていきます。

たとえば、日々の業務の中で「今やってることに意味があるのか?」「なぜ、この商品やサービスを提供しているのか?」といった問いに、社員一人ひとりが自信を持って答えられる状態が理想です。それは、ビジョンが社内にしっかりと浸透し、目的地が共有されている証拠でもあります。

わかりやすい例として、「スターバックスコーヒー」があります。スターバックスは創業当初から、「サードプレイス=家でもなく、職場や学校でもない、くつろげる第三の居場所」というビジョンを掲げてきました。だからこそ、どの店舗を訪れても、統一された空間デザイン、接客スタイル、そしてメニューによって、“スターバックスらしい体験”が提供されます。
この一貫性こそが、ビジョンが現場に浸透し、日々の判断や行動の旗印として機能している証といえるでしょう。

一方で、そうした問いに言葉を詰まらせてしまう組織は、まだ旗印が立っておらず、進むべき道筋が見えていない状態かもしれません。

以前、私がブランディング支援を行った、地域に根ざした不動産会社でも、社員全員が日々熱心に業務に取り組んでいる一方で、「自社が目指す未来」については、うまく言葉にできない状況でした。経営者は、想いや展望を日ごろから伝えているつもりでしたが、それが社員には十分に届いていなかったのです。
そこでまず、創業者から受け継いだ想い、そして時代に合わせて地域の課題と向き合ってきた歩みを丁寧に振り返りながら、それらを言語化し、一つのメッセージとして束ねる作業を共に行いました。
まだ社内への浸透はこれからですが、社員にも少しずつ意図が伝わりはじめていると感じます。その変化が、これから日々の業務にも、より明確なブランドの一貫性として表れてくるはずです。



「言葉にすること」で、はじめて“未来”は共有される

ビジョンは、頭の中で思い描くだけでは意味がありません。それを「誰が聞いてもわかる言葉」で明文化することが何より重要です。なぜなら、ビジョンは“未来の共有”を実現するためのものだからです。特に今の時代は、部署や業種の垣根を超えて人が関わりあう場面が増えています。多様な立場の人が一つの方向へ向かうためには、“共通の言語”が必要です。
ここで意識したいのは、「ビジョン=企業が語りたいこと」ではなく、「ビジョン=社会にどう貢献したいか」という視点です。つまり、それが自分たちだけで完結する理想像ではなく、顧客や社会とともに育む未来であるべきなのです。だからこそ、ビジョンをつくるときは、単なるスローガンではなく、「共感できる言葉」「実現したくなる未来像」であることが求められます。

ビジョンがあるブランドは、変化にも強くなる

最後にもうひとつ、ビジョンがあることの大きな意味は、「変化に強くなれる」という点です。社会や市場は常に変化しています。そんな中で、状況に応じて柔軟に動けるかどうかは、「ぶれない軸」を持っているかどうかにかかっています。つまり、ビジョンとは“変わらない理想”でありながら、“変化に対応する基準”にもなるのです。
そして、その理想に向かって努力を重ねる姿勢こそが、社員にとっての誇りとなり、顧客やパートナーにとっての信頼につながっていく。これこそが、ブランディングにおける「ビジョン」の力であり、その本質なのです。

少し熱が入りすぎてしまったかもしれませんが、ビジョンの大切さが、少しでも伝わっていれば嬉しいです。次回は、実際に魅力あるビジョンを描くためのステップや事例をご紹介しながら、もう一歩深く掘りさげてみたいと思います。

つづく

プロフィール

Branding & Design TOYPLOT 代表
ブランドデザイナー ホーリー 
1974年生まれ、大阪府出身。
デザインの専門学校を卒業後、数社の広告制作プロダクション勤務を経て、2010年3月独立。

TOYPLOTでは、企業のブランディング及び広告・デザイン制作のご依頼をいただいて活動しています。
これまで多くの広告制作に従事してきましたが、その過程でデザインだけでは解決できなかった課題も少なからずありました。制作したデザインで、クライアントの“想い”や“魅力”をお客さまに伝えきれているのか?と、もやもやとした思いを抱えていた時に出会ったのがブランディングでした。
これまで培ってきたデザインの経験とブランディングという戦略を武器に、“Branding & Design” で、顧客の成長とファンづくりをお手伝いします。


・ 「東京ビジネスデザインアワード 2024」 テーマ賞受賞

・ 特許庁(独:INPIT)認定 デザイン専門家/ブランド専門家
・ 一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 トレーナー資格取得
・ 一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 1級資格取得
・ 一般社団法人ブランド・プランナー協会 2級資格取得
・ 公益社団法人 日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)会員
・ 東京都中小企業振興公社 デザイン経営スクール 第5期修了

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