ホーリーの選ばれるブランディング #13

毎月第4週の木曜日に発信

この会社の特徴

みなさん、こんにちは。
ブランドデザイナーのホーリーです。
グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートして約30年。
主に企業の広告制作に従事してきました。2014年にブランディングと出会い、その「伝わる威力」に魅了されてから、今年で11年目となりました。
現在は、企業の「らしさ」を磨いて、デザインで「よりよく」伝える、ブランドデザイナーとして活動しています。

今回は、京都のお土産物としておなじみのあぶらとり紙「よーじや」のリブランディングについてお話しします。1904年創業、121年の歴史を持つ「よーじや」は、リブランディングに伴い60年ぶりにロゴマークを刷新しました。新しいロゴはSNS上でも話題となり、賛否両論の声が上がりました。なぜ「よーじや」のロゴ変更は人々の心を動かしたのか?そして、企業のロゴとは、いったい誰のものなのか?今回はそんな視点から深掘りしていきたいと思います。



60年ぶりのロゴ刷新!鏡越しの女性——秀逸な旧ロゴの魅力

1965年に誕生し、長年親しまれてきたロゴマーク。手鏡に映った京女性が印象的なこのデザイン、一度は目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

このロゴは、デザイナーの視点から見ても非常に秀逸なアイデアだと感じます。単に化粧をしている女性を描くのではなく、「鏡に映る姿」として間接的に女性を表現している点が斬新です。鏡越しに目が合うような、ちょっと不思議で印象的な感覚を覚えます。また、シンプルな線で描かれた手鏡からは、当時の京都の文化や、そこに暮らす女性たちの佇まいが自然と想起されます。独特な手描きの文字も、その時代の空気感を見事に伝えています。

長年にわたり親しまれてきたロゴマーク(左)と、リブランディングによって刷新された新しいロゴマーク(右)。

出典:よーじや公式サイト

リブランディングの背景にある「脱・観光依存」

「よーじや」は、1990年に起きたあぶらとり紙ブームをきっかけに、地元の人々に親しまれていた存在から、観光客にとっての定番ブランドへと成長を遂げました。しかし、時代の変化とともに、あぶらとり紙の売上は全盛期の4分の1以下にまで落ち込んでしまったといいます。京都土産として広く知られるようになった一方で、商品の需要そのものが徐々に減少してしまったのです。

こうした状況を受け、2019年8月に5代目代表取締役が就任。「みんなが喜ぶ京都にする」をコーポレートスローガンに掲げ、リブランディングに取り組みました。観光客に偏っていたビジネスモデルを見直し、もう一度原点に立ち返って、地元・京都の人々にとっての「おなじみの店」となることを目指しているそうです。

リブランディングの経緯など、詳しくは『 よーじや公式サイト 』をご覧くださ
い。

長く親しまれたデザインは、もはや“企業だけのもの”ではない!?

新たなブランドイメージを築くため、「よーじや」はシンボルマークを手鏡のシルエットへと刷新。ロゴタイプも、これまでの味わい深い手描き文字から、現代的でかわいらしいオリジナルフォントへと刷新しました。また、手鏡に映る女性がキャラクター「よじこ」として登場するなど、新たな試みにも積極的に挑戦しており、その本気度が伝わってきます。

このリブランディングのニュースを受け、X(旧Twitter)には多くの反応が投稿されていました。伝統的なデザインを惜しむ声や、新しい挑戦を応援する声など意見が分かれましたが、全体的には賛成の声が多い印象でした。

思い返せば、以前アパレルブランドの「GAP」がロゴを刷新した際、ファンからの反発を受け、わずか数日で元のデザインに戻すという出来事がありました。あの時は大きな話題となり、ブランドイメージと顧客の感情の結びつきの強さを改めて感じさせられました。

今回の「よーじや」のリブランディングは、もう少し複雑な構造を持っています。というのも、同社にはもともと「コーポレートブランド」という明確な概念がなく、先に有名になった製品ブランド(あぶらとり紙)の表紙デザインを、コーポレートブランドへと昇華・刷新するというかたちで行われたからです。土産物としてのイメージが強かった主力商品から「脱・観光依存」を進めるためには、社内外における大きな意識改革が必要だったと想像されます。

伝統的なイメージを持つデザインから、より親しみやすく、接しやすいブランドへと舵を切った5代目代表取締役の強い意志と覚悟が感じられる変化といえるでしょう。

一部に生じた誤解と、その真実

あ、そうそう——今回のリブランディングで一部に誤解が生じ、反発を招いた点がありました。それは、手鏡に映る女性の伝統的なデザインが完全になくなると思われたことです。しかし実際には、あぶらとり紙をはじめとした商品や店頭で、これまで通り「よーじやブランドの象徴」として大切に使い続けられるとのことです。

今後の「よーじや」ブランドの歩みが、どのように進化していくのか。引き続き、その成長を見守っていきたいと思います。

プロフィール

Branding & Design TOYPLOT 代表
ブランドデザイナー ホーリー 
1974年生まれ、大阪府出身。
デザインの専門学校を卒業後、数社の広告制作プロダクション勤務を経て、2010年3月独立。

TOYPLOTでは、企業のブランディング及び広告・デザイン制作のご依頼をいただいて活動しています。
これまで多くの広告制作に従事してきましたが、その過程でデザインだけでは解決できなかった課題も少なからずありました。制作したデザインで、クライアントの“想い”や“魅力”をお客さまに伝えきれているのか?と、もやもやとした思いを抱えていた時に出会ったのがブランディングでした。
これまで培ってきたデザインの経験とブランディングという戦略を武器に、“Branding & Design” で、顧客の成長とファンづくりをお手伝いします。


・ 「東京ビジネスデザインアワード 2024」 テーマ賞受賞

・ 特許庁(独:INPIT)認定 デザイン専門家/ブランド専門家
・ 一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 トレーナー資格取得
・ 一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 1級資格取得
・ 一般社団法人ブランド・プランナー協会 2級資格取得
・ 公益社団法人 日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)会員
・ 東京都中小企業振興公社 デザイン経営スクール 第5期修了

《 ブランディング・サービス 》
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