未来のまちづくりに貢献したい。株式会社イチカワでは社会インフラに必要なモノづくりを行い日本を代表する大手電機メーカーから依頼を受けています。公共・産業用電子機器や鉄道制御装置、変圧器などの製造だけでないコアな技術を追求。モノづくり技術とI T技術を駆使しながら自社ブランドを開発しています。今回は、代表取締役副社長市川敦士さんに最新技術を用いた独自開発と未来に向かうイチカワの方向性についてお話を伺います。
企業情報:株式会社イチカワ
事業概要:電子・電機機器の製造
住 所:羽村市、瑞穂町、(群馬県)
代 表:市川 博士
時代のニーズを読み、モノづくり一筋で自社ブランドを高めてきた
元々は変圧器の製造から始まった株式会社イチカワ。昭和38年に創業し、代表の市川昭男さんが「信頼に応えるトランス・テクノロジー」を理念に徐々に製品の幅を広げていきました。
イチカワの強みは最新の技術を取り入れ、豊富な経験に基づいた製品の提案、どこの企業にも引けを取らない顧客満足度の高い製造と品質です。企画から設計、製造、試験、保守までワンストップの製品完成を行えます。
90年代以降から交通インフラの制御装置を中心に事業を展開。長年にわたり大手電機メーカーの電子機器、電源機器の受託製造を行い、社会インフラの発展に貢献しています。
羽村市に本社工場を、瑞穂町、群馬県高崎市にサテライト工場を有し、創業以来、電子機器のパイオニアとして歩んできました。現在は2代目社長に兄の博士さんが就任し、弟の敦士さんが副社長として支え、総勢200名以上の社員と共にイチカワの事業を進めています。
具体的にどんな仕事をしているのか。業務内容の一つに鉄道車両用の電気系統制御装置があります。皆さんも一度は乗ったことがあろう、日本各地を走る鉄道車両の部品を数えきれないほど手掛けています。どの車両にもイチカワブランドのトランスやイチカワの製造による装置が組み込まれ、いかに信頼が厚く技術力が高い企業なのかがわかります。私たちが目的地に安全安心にたどり着けるのは、イチカワの技術や技能が貢献していると言っても過言ではありません。
2010年には国内のみならず中国上海に上海市市川電気科技有限公司を設立。日本を飛び出し、まだまだトランス技術の需要があると見込んだ海外進出では、イチカワの技術を受け継いだ現地の社員たちによる新たな技術開発が行われています。現在は海外の大陸を走る鉄道にも携わり、大きな一歩を踏み出しました。
他にも、全国の都市にあるエレベーター機械室に設置される機器を製造。日頃から何気なく乗っているエレベーターもイチカワの技術が組み込まれています。「我々の仕事は暮らしの身近にあります。とても誇らしいことです。しかし、これで満足してはいけない。最新の情報を社員に発信・共有しながら、モノづくりのレベルを上げていきたいです」と語っていました。
若手のアイデアから生まれたDXアプリ。イチカワは、社員のチャレンジを応援
イチカワではこれまでの受託製造業と並行し、独自技術で製品開発を進めています。2018年よりloT化推進室を立ち上げ、独自開発のIT技術を元にモノづくりの効率を上げてきました。現在は「D X推進室」を開設し、社内のデジタル化を強化しています。
中でも注目したいのは2021年に製造したクラウド型デジタル組立手順書「iM-ManagerCloud(アイエム・マネージャー・クラウド)」(略:imm cloud)。現場の作業者たちから上がってきた声をきっかけに作られたアプリケーションです。
これまで生産性・技能継承・協力会社への作業指導において、従来のデータベースの作業手順書だけでは解決できない部分もあったとか。作業者によって起きる品質の良し悪し、ベテラン社員から受け継ぐのが難しい作業…。これらの課題に対して解決に乗り出したのは30代の男性社員でした。
アイエムエム・クラウドは、作業台に設置したモニター画面から作業工程を動画や画像を表示し順を追って解説。初心者でも、指示通り組み立てることで最後まで完成させることができ、作業者の進捗状況を自動的にクラウド上へアップロードされる仕組みになっています。間違いやミスが減ることで品質のバラツキが減少し、生産性が大きく向上しました。
他にもメリットがあります。
クラウド化により情報共有がスムーズになり、移動コストの大幅な削減を実現しました。イチカワの協力会社で一番遠方にあるのは青森。これまで習得が難しい複雑な作業については、社員自らが現地の工場に出向いて直接指導に当たっていたとのこと。往復だけでも1、2日がかり、どうしてもコストと時間が嵩んでいました。しかし、アイエムエム・クラウドのデジタル組立により、開発後は社員を派遣しない分、社内での稼働率があがりました。
「現場の苦労する声を聞き取り、アプリを構築できたのは社員のおかげです。画期的な開発に踏み切れたと思います。これからも社員のチャレンジを応援していきたいです」と、敦士さんは力強く話します。
今は数社と契約交渉を行い、いずれは広範囲にパートナー企業と連携しイチカワのクラウド型デジタルサービスを使ってもらいたいとのこと。次はどんな新しい開発が生まれるのか。社員たちの希望やアイデアに期待が高まります。
モノづくりを継承し発展させていくのは、私たちの使命
創業から60年経ち、昭和から令和にかけてバブル崩壊やリーマンショックなど経済危機はあったものの社員一丸となって成長してきたイチカワ。荒波を乗り越えて、右肩が上がりに実績を重ねてきましたが、この先はどうなっていくのでしょうか。
敦士さんは、「新しい風を吹かせたい」と新しいモノづくりの仲間を募集しています。
本来であればもっと外部に発信し、イチカワの魅力や技術の素晴らしさを伝えたいのが敦士さんの願いです。社内には現状に満足してしまう保守的な傾向も残りますが、それを打破できるような会社やモノづくりに信念を持ちたい。今、この求人を読まれているあなたが今後のイチカワを支えていくことになるかもしれません。
イチカワでは入社後に、基礎・外部研修・I T教育を受け社会で活躍するための技術を学びます。業務に必要な資格はいくつもあり、社内ではOJTを中心に資格取得に励むとか。技能、I T、電気、機械類の資格など多岐に渡りますが、高度な資格であれば受験料などが免除されます。
加えて人材育成ではキャリア支援を検討し、今以上に社員の悩みや課題を向き合う組織づくりを進めていきます。
さらに、新たな取り組みとして提携関係のある大学の大学院に進む社員への学費を負担するのだとか。その大学は創業者市川昭男元会長の出身校でもあり、今では共同研究を行っています。
「これから工学系大学院で博士号を取りに行く社員がいます。彼はイチカワを支える重要な人材で、学費を弊社で負担することにしました。イチカワで培ってきた経験を、学位分野での研究により発展させて、業界を代表する技術者になることを期待しています」
ここ近年、女性社員も力を発揮しています。日本溶接協会が実施する特殊な難関、技能資格ソルダリングマイスター取得。表彰され、華々しい活躍ぶりを評価されました。社員各々の努力が実を結び、未来の社会インフラを確立と自身のキャリアップを目指しています。
敦士さんの中で特に思い出に残るのが、30代の社員たちと2023年に某テレビ局で放送された企業紹介の3分番組に出演したこと。苦労を重ねて研究開発をしたアイエムエム・クラウドについて、わかりやすく丁寧に解説する姿を見て思わず感極まったといいます。
「出演する前は『出るのはちょっと遠慮したいです』と控えめに話していましたが、実際にはきちんと商品を説明してくれていました。公共電波を使って社員の思いを聞くという不思議な体験でしたけれど、嬉しかったですね」と敦士さん。社員に思いを寄せていることが伝わってきました。
新しい技術を柔軟に取り入れられるのが中小企業の魅力。激変する世界経済の中で生き残りをかけて、イチカワは常に最前線で走り続けます。今後は創業100周年(2063年)を目指して時代の変革に対応しながら、多摩地区を中心に人々の生活を豊かにしていくために、その力を尽くします。
最後にイチカワではどんな人材を求めているか尋ねました。「仕事に真剣に向き合える素直さや好奇心のある方を望んでいます。技術習得への熱心さが大事ですので、社会貢献に前向きな若者と働きたいです」
イチカワで新たな力を身に付けてモノづくりをしたい方、ぜひ一緒に自社ブランドを盛り上げていきませんか。
社員さんたちのリアルな声
●イチカワで働く魅力をどんなところに感じていますか。
常に新しいことにチャレンジできる環境に魅力を感じます。開発案件を中心に、様々な製品に関わることができます。
ソフトウェア、ハードウェア、IT、DXなどの分野で、技術者としての能力を存分に発揮できる仕事に取り組めます。
また、CAD、実験室、3Dプリンタなどの設備が充実しており、自分の手で製品を作り上げる実感を得ることができます。
●イチカワで働いていて成長を感じたエピソードを教えてください。
学生時代に学んでいなかった内容も、仕事を通じて学びながら開発を行い、初めて製品として出荷し、それが社会の一部として使われていることが分かったときに成長を実感しました。
入社当初は経験がなかった自分も、今では多くの開発に携わることができていると考えると、自分自身の成長を改めて感じます。
●これからどんなことを目標に働いていきたいと思いますか。
世間でも問題となりつつある技能継承や人手不足問題に対応するため、協働ロボットを用いたモノづくりにチャレンジしています。現状ではネジ締め、はんだ付け、不良判定など一部の作業でしか実現できていませんが、将来的にはロボットが全自動で高品質な製品を作る未来をイメージしています。
●イチカワで働く魅力をどんなところに感じていますか。
イチカワが製造した製品は社会インフラや鉄道関係など、色々な所で使用されています。その製品製造に私も携わっていると思うと、責任は重大ですがやりがいがあり、イチカワで働く魅力と感じています。また、会社の色々な制度の充実や明るい社風なども、イチカワで働く魅力と感じています。
●イチカワで働いていて成長を感じたエピソードを教えてください。
グループリーダーなど、仕事を任された時です。私がリーダーとして製造グループをまとめ、目標を達成した時に自身の成長を感じています。また、業務に必要な資格にチャレンジし合格、技術賞を受賞した時も成長を感じました。
●これからどんなことを目標に働いていきたいと思いますか。
若手社員への技術、技能の継承と高い信頼性、品質を求められる製品製造に携わっていることから社会に誇れる製品作りを目標に働いていきたいと思います。