「地元で、地域に根ざした仕事をしたい」。一度は都内で独立開業した福島測量・福島土地家屋調査士の代表・福島善広さんは31歳の時、稲城市に戻りお父様の会社の跡を継ぎました。
測量の仕事は幅広く、お客様は不動産屋などの業者をはじめ、行政機関や個人など、様々な方々とやり取りします。また、家や建物を建てる前だけでなく、完成した際にも必要とされる仕事。専門分野ならではの面白みや、ステップアップ、地域でのやりがいについて伺いました。
企業情報:福島測量・福島土地家屋調査士事務所
事業概要:土地境界確定測量・不動産登記関連代行業務・現況測量
住 所:東京都稲城市百村86
代 表:福島善広
不動産売買や相続の際、必ず出番がある「土地家屋調査士」
二人一組で三脚にカメラのようなものを載せて覗き込む測量の様子。皆さんも、街中で目にしたことがあるのではないでしょうか?土地家屋調査士は土地や建物の位置・形状・面積などを正確に測る専門職。建築・土木において基本となる、なくてはならない仕事です。今回ご紹介する福島測量・福島土地家屋調査士事務所で担っているのは、測量を行い、かつ不動産の「法律的な境界・表示」を確定させる「土地家屋調査士」です。
土地家屋調査士の仕事は大きく分けて3つ。不動産売買や相続の前に、土地の境界をはっきりさせるための「土地境界確定測量」、一つの土地を複数に分ける際の「土地の分筆登記」、新築時に建物を登記する「建築表題登記」です。土地や建物を正確に測量し持ち主を明確にします。いつの時代も必要とされる仕事なのです。
福島測量・福島土地家屋調査士事務所では、現在代表を務める福島善広さんのお父様の代から2代に亘り、稲城市を中心に不動産の売買や相続にあたる測量・登記を行ってきました。
数十年先も信頼される仕事を

全ての建物、道路を造る際に必要とされる「測量」。土地家屋調査士は公務員でこそありませんが、誰にとっても公平な測量結果を出すことが求められます。登記簿や測量図には土地家屋調査士の名前が記載され、その書面は何十年も残ります。土地家屋調査士は社会インフラのひとつとも言えるのではないでしょうか。
万が一その結果に不備や当事者にとって納得いかないことがあった場合、数十年後に売買や建設が起こる際にトラブルになる可能性も否めません。土地家屋調査士は当事者同士が遺恨を残さないよう丁寧な対応を心掛ける必要があります。
福島さんに自社の企業理念について伺うとこのような答えが返ってきました。
「この会社が、『地域』のための会社になれたらいいと思います」。
測量は、「ただ測るだけ」ではありません。その土地、そこに住む人、所縁のある人を相手にする仕事です。そのため、仕事をするうえで時代や地域性を鑑みた分析や、その土地の持ち主や周辺を利用する方のことを考えた現場での立ち振る舞いが必要とされます。
誰にとっても公平なはずの測量結果ですが、時代や地域性によって測量方法に違いがあるため、誤差が見られることがあります。
例えば田んぼのあぜ道。隣地との境界をあぜ道の中央でとるのか、脇でとるのか、地域によって差が生じることがあるのです。依頼人には過去の測量結果を提示した上で、現代の測量方法で得られた結果を提示します。また、古い時代の測量結果は、税金を安くするために実際の測量値より小さく取られていることがあります。これも、売買のタイミングにおいては当事者にとって不利益になってしまうため改めて測量し、しっかりとした測量値を提示しています。
現場での立ち振る舞いとは、挨拶をする、ゴミを捨てない、移動した物は元に戻す、などある意味社会人として当たり前のこと。従業員にも声をかけて徹底しています。
「釣りが好き!」海の近くに住みたい一心で進学
福島さんは、もともと家業を継ぐ意思を強く持っていたわけではありませんでした。高校時代は釣り好きで「海の近くで暮らしたい」という思いから静岡の大学に進学。「魚好きか、釣り好きか、サーフィン好きか…。そんな学生ばかりでしたね」。海洋土木学科を専攻、測量実習を通じ「測量士補」の資格を取得します。さらに実務経験を積み測量士の資格が取れれば、ステップアップし家業である土地家屋調査士への足掛かりにもなります。跡を継ごうと決めていた訳ではなかったそうですが、測量士補の資格が取れる土木学科への入学はお父様の薦めもあったとか。「跡を継がなきゃいけないからというよりも、つぶしがきくから。それに、親からはこの資格取っておいた方が楽だよって言われたこともあって。土地家屋調査士の資格を取る際、測量士補の資格を持っていると、2次試験が免除になるんですよ」。
しかし卒業後は一転し、当時急速に普及していたインターネットの世界へ飛び込みます。1990年代後半はスケルトンボディのiMacが巷を賑わせ、ADSLの登場でインターネットが使い放題になった頃です。世界中と瞬時につながることができる現実を目の当たりにし、「これからの時代はインターネットだ」と確信した福島さんが、新卒で選んだのはIT関連企業でのネットワークエンジニアの道でした。ソリューション部に配属され、社内LANやWAN構築などに携わりながら技術を学び、知識を深めていきました。
都内での独立企業から一転、地元稲城で跡を継ぐことに
大学卒業後IT企業で働き出して2年半、熱意をもって働いていた福島さんのもとに転機が訪れます。福島さんが所属する部署がなくなり、新しい配属先での仕事内容に興味が持てず「やりたいことができない」と感じ、退職してしまいました。道しるべになったのは、幼少期より見ていた土地家屋調査士として独立開業したお父様の姿でした。「独立すれば好きなことができる」、そう考えた福島さんは、測量の業界に飛び込みました。
池袋の土地家屋調査士の事務所で3年間修業する中、当時の同僚が独立すると聞き、自身も独立を目指す身として付いていくことにしました。その間、朝晩は土地家屋調査士の試験を受けるための勉強に充てました。当時、土地家屋調査士の合格率は5%と狭き門。「人生で一番勉強した」と話す福島さんは、3年を経て合格。見事独立への切符を手に入れ、29歳の時文京区で開業しました。
それから2年が経つ頃、お父様が福島さんに「稲城に戻って家業を継がないか」と打ち明けます。事務所の老朽化、そして都市計画の一環で取り壊しの必要が生じたことがきっかけで、お父様は福島さんが継がないのであれば会社をたたむことを考えていました。福島さん自身はその頃結婚を考えており、また土地家屋調査士を営む上で新規開拓の難しさを感じていました。福島さんはお父様の「もし継ぐなら自分の身体が動くうちに継いでほしい」との言葉に、稲城市に戻り家業を継ぐことを決意します。
これまで、生まれ育った街でお父様の残してくれた人のつながりを「財産」と感じながら事業を展開してきました。
お客様は依頼人、だけど…「隣地」の方が新たな顧客になることも
測量や土地家屋調査士の仕事の「面白さ」や「やりがい」を福島さんはどう感じているのでしょうか。
家を建てたり道路を作ったりと、一連の建設工事の全ての始まりになるのが測量です。そして測量において最初の重要な業務が工事を行う土地に面した「隣地」の方の立ち会いです。
「測量をする際、私たちは一番に隣地の方に声をかけて、作業を進めていきます。実はこの時の対応は後々まで引きずります。最初の印象が良くないと、あとに響いてしまうことがある。でもそこがうまくいけば、余程のことがない限り、なんとかなるんです」。最初の挨拶や対応がその後の関係を左右します。印象が悪ければ工事全体に影響し、逆に円滑に始まれば信頼が続くのです。
そのため、従業員にも「挨拶や丁寧な対応を心がけること」「測量のために動かした物は必ず戻し、入る前よりもきれいにすること」を徹底しています。見られていないようで周囲は意外と見ているため、小さな配慮が信頼につながります。
測量が終わって、建設工事が始まっても「隣地」の方が福島さんを頼りにすることも。「夜は工事しないはずなんだけどやってる、っていう電話がかかってくることがあるんです。もう僕たちからは一旦手が離れているはずなんですが、その方もどこに連絡していいか分からない。なので、こちらから工事業者の方に『隣地の方がこう言っているんでお願いしますね』とお伝えすることがあります」。
また、隣り合う土地の境界位置を土地所有者が確認する「境界確認」の際には、落ち葉や工事の騒音といった測量以外の相談を受けることもあり、依頼人へ橋渡しをする役割も担います。
測量を発注した依頼主だけでなく、隣地の方と円滑なコミュニケーションをとることが必要な測量の仕事。福島さんの誠実な対応が功を奏し、隣地の方から「うちも測量をお願いしていい?」と新たな依頼につながることもあります。
隣地の方と良好な関係の中で測量業務を遂行し、建設等の段階で何かあったときも最初の対応が良かったから乗り越えられる。難しい案件も「福島事務所さんだから何とかなった」、そう言われたときに、大きなやりがいを感じるそうです。
この仕事に向いているのは「細かいことにこだわれる人」「何のための測量なのか考えられる人」

測量は資格を取って行う、非常に専門性の高いものです。その「面白さ」について、福島さんはこんな風に話してくれました。
「測量は依頼人の利益に偏るのではなく、公平中立な立場で図面があれば図面に忠実に行う点が特徴です。例えば、弁護士さんは依頼人側に立たないといけないですが、私たちの仕事はそうではありません。正しいことを見つけるために測量をしています。第三者として正しい状況を示すことが使命であり、それがこの仕事の面白さです」。
そのためには「細かさ」が重要。例えば過去の測量データと現在の測量データを比較して数値が違うということがあった際には、果たしてどちらの数値が正しいのか、資料の確認や現地の状況確認を踏まえ結論を出します。
細部に気を配り、正確さが第一に求められる職業ですが、状況に応じて自身の行っている測量が何のための測量なのか目的を考えることも必要です。「私たちの仕事って手段なんです。測量したいから測量をする人は、あまりいません。測量したうえで土地を売りたい、建物を建てたい、道路を作りたいとか、様々な目的のために行います。だから、建物や道路が完成するまでの流れを頭に入れておく、この測量が何のための測量なのかを理解しておくことが望ましいです。知識は広く浅くあった方がいい」。
リモートワークもOK! ライフスタイルに合わせた勤務環境
福島さんの会社では従業員さんにとって働きやすい環境を推奨しています。ある程度業務に慣れてきたら、なるべくその方のライフスタイルに合わせた働き方を認めるようにしています。就業時間は8時半から5時半ですが、お子さんの送り迎えによる出勤時間の調整や、中抜けなども可能にしています。また、隣地の立ち会いなどが夜間に入ることもあるため、出勤を後ろ倒しにしたり、直行直帰で対応しています。フレックスタイム制なのです。
また、測量の仕事は、現場作業と資料作成などのデスクワークがあり、屋外での作業と室内での作業が半々です。そのため、現場に出ない日は出社せずリモートワークでの勤務が可能。電話の転送や、外部からの社内データアクセスなど、環境を整えています。
個人のスキルアップに関しても会社でサポートします。測量関連の資格取得支援はもちろん、福島さんは近年話題のAI検定などIT関係の資格についても奨励しています。その訳は、自社のITに関する知見を底上げしていきたいから。社内の業務効率化が図れる資格なら、取得に向けてサポートします。
現場で使用するにあたって、知識・経験値が必要な高精度の測量機器「トータルステーション」は、使い方をマスターすると手当が付きます。
福島測量・福島土地家屋調査士事務所で、測量士・土地家屋調査士として、地域で仕事をする一社会人として、自分を成長させてみませんか。


