多摩エリアを中心に、建設現場で職人が作業する際に必要となる足場の組み立てから解体までを手掛ける足場工事会社「CAY(シーエーワイ)」。若手からベテランまで幅広い年齢の職人が働く現場では、日々明るい声が飛び交っています。一体、どのように心地よい職場環境を作っているのでしょうか。代表の安藤千春さんに、足場工事という仕事の魅力とCAYでの働く環境について伺いました。
企業情報:CAY
事業概要:足場工事
住 所:国立市
代 表:安藤千春
代表は17歳から足場工事業一筋 始めた理由は「恰好いいから」
猛暑日の中、出迎えてくれたのは「これ(着ている空調服)着ますか?涼しいですよ」と初対面からユーモアに溢れる安藤千春さん。取材当日は、八王子にあるマンション屋上の防水工事を行うための足場設置を行っていました。現場では従業員や外注スタッフの方が、すれ違うたびに「こんにちは!」と気持ち良い挨拶をしてくれます。
安藤さんが代表を務めるCAYは、主に多摩エリアの建設現場で必要となる足場工事を専門に行う会社です。大規模建物の修繕やメンテナンスには外壁補修屋や塗装屋など様々な専門業者が関わっており、一つの現場では平均40人の職人が足場を利用します。それぞれの専門スキルを持つ職人が作業に必要となる足場を設置し、作業が終わった段階で解体まで行うのが足場工事業の仕事です。自分たちの安全や作業効率だけでなく、作業する職人のことを考えた足場づくりが求められます。
安藤さんが足場工事業に関わり始めたのは、17歳のとき。以来、今日までこの道一筋で働いてきました。
「2人目の子どもが生まれて親としてちゃんとしなくちゃと思っているとき、高所に設置されている足場と作業中の足場職人を見かけて『恰好いいな』と思ったんです。その場で『この会社にはどうすれば入社できますか?』と聞いて、次の日には面接に行きました」。
憧れから足場工事業を始めた安藤さんでしたが、実は高所恐怖症。最初の現場では、足場の上で全く動けなかったそうです。6年間の下積みを経て、同業の兄と会社を興しました。しかし、経営者目線の兄と職人目線の安藤さんの考え方は次第にぶつかるようになります。方向性の違いから独立するも一度は廃業し「もう足場業は辞める」とまで考えていました。
憧れの人への尊敬と感謝を込めた社名「CAY」
そんな安藤さんの支えになったのは、幼馴染でもあるYSTの的場義春さんです。的場さんから「ここまでやったのに諦めるのはもったいない」と力説され、再起をかけて始めたのが現在の会社です。
「横文字なら他社との差別化になり、印象に残る」とアドバイスを得て付けた「CAY」という現在の社名は、自分のイニシャルに幼馴染の的場さんのイニシャル「Y」を付けたものです。自分の後ろ盾となり応援してくれた彼へいつか恩返しができたらという感謝の念と、仕事とプライベートのメリハリがしっかり付いている的場さんのような会社を作りたいという思いを込めた社名です。
今日までさまざまな苦労をしてきた安藤さんだからこそ、一つひとつの経験が現在の職場環境に活かされています。高所恐怖症だった過去があるからこそ「高いところは慣れるよ」と自信を持って言えますし、日曜祝日や長期休暇はしっかり休み、プライベートの休みにも寛容です。もちろん、稼ぎたい意欲のある人はしっかりと働いて稼ぐこともできます。
経験不問。求めるのは、コミュニケーションを取ろうとする気持ち
一つの現場に要する期間は平均して2週間から1カ月ですが、2024年8月時点でCAYの社員は3人。そのため現在はそれぞれが現場監督となり、知り合いや別会社と協力し合って案件を請け負っています。対応力の早さが強みですが現状は人手不足のために仕事を受けられないこともあるため、より事業を拡大し、依頼してくれるお客さまの声に応えるために今回の人材募集に踏み切りました。
「未経験者であれば、まずは先輩に付いて基礎から仕事を覚えてもらいます。最初に必要となる道具や資格にかかる費用は全て会社が負担します。仕事現場では多くの職人と関わるので、言葉遣いや態度は大切。コミュニケーション力は付けてほしいと考えています。
例えばお茶を出すときに無言で出すのではなく、相手の顔を見ながら渡すような気配りができる人を育てたいです」。とにかく仕事はたくさんあるので、経験者や将来的に独立を目指す人も大歓迎とのこと。その人の実力に合った仕事を任せていきたいと考えています。
「僕は、従業員の意見を尊重するタイプ。その人の考えを聞いて『やってみれば』と仕事を任せるスタンスなので、成長できる会社だと思います。足場業は稼げるので独立する人も多いですが、稼ぎ続けるのは大変です。技術面での未熟さは自分一人ではなかなか気付けませんし、税金の知識やチームワークも必要とされます。独立を考えている人には、経営者目線で客観的なアドバイスをしたいと考えています」。
自身も独立経験があり、現在安藤さんの右腕的存在となっている従業員の高橋さんは、「例えるなら、CAYの関係は家族のよう。プライベートな相談にものってくれる」と職場環境を大絶賛。「家族」というと強固な人間関係ゆえにしがらみが多く、新人は馴染みにくいイメージがあるかも知れません。しかしお二人からはお互いがお互いを尊敬し、切磋琢磨して高め合っている様子が見られ、良い意味で「近すぎず、遠すぎない」程良い距離感を保っている様子が伺えました。
安全は最優先。大事なのは、従業員にとって快適な職場環境
安藤さん自身が人情味あふれる性格なので、従業員の働きやすさは重視しています。勤務時間は8時から17時。体力の消耗は作業効率にも影響するため、休憩時間は2時間。残業はせずに定時できっちり仕事を終わらせるスタイルです。
雨天や天候不良時は、リスクの少ない軽作業を進めます。取引先から作業の継続をお願いされれば「もし事故があったら、責任取れますか?」とプロとして毅然とした態度を取り、従業員の安全を守ります。取材当日も、働く従業員の顔色や体調面を気遣う様子が見られました。
建設業界では「お付き合い」で安く仕事を請け負う会社もありますが、業務量に対して正当な対価をもらうためときには金額交渉も行います。安い仕事は利益を生むために納期を急ぐなど従業員に対して負荷がかかり、ギスギスしてしまうためです。現在は経理スタッフを専属で雇うことで経営の安定を心掛け、みんなが余裕を持って楽しく仕事ができる環境を生み出しています。
また足場工事業は、高所で作業できることが大きな魅力です。今までで最も印象に残った現場は、静岡県のあるリゾートマンション。海岸沿いに建つオーシャンビューリゾートのため現地に寝泊まりし、職人たちと8カ月間過ごしました。仕事は長期間にわたりましたが、11階建てのマンションの足場から見下ろす海は、自分たちが建物に関わったことを実感できる瞬間で爽快感があったと語ります。
外注スタッフが関わる日には大人数でやるべき仕事を行えるように段取りを組む、保管にコストがかかる足場材はリースを活用するなど、全体の作業効率や利益率にも気を配り、将来的には株式会社設立も視野に入れています。
フォローは万全!若手にも仕事を任せ、考えさせる機会を作る
作業の効率や技術を向上させることはもちろん必要ですが、足場工事業にはメンタルも大きく影響してきます。仕事への自信のなさが生まれれば集中力を欠きミスにつながるなど、良い仕事ができなくなるからです。そのため安藤さんは重要な局面や従業員に緊張した様子が見られるときにはあえてふざけて場を和ませることで緊張感を解き、常に良い空気感で働ける環境を心掛けています。
阿吽の呼吸が根付いているため、フォロー体制も万全です。取材日にも従業員が高所作業をしている間は、地上で安藤さんが足場に使用する単管パイプをまとめる姿が見られました。足場工事業のやりがいでもある高所での作業は従業員にどんどん任せ、不安定な足場組みの指摘や危ない場所をフォローするのは安藤さんの仕事です。
先回りして動くことは職人の作業効率化や安全対策につながるだけではなく、周囲の通行人の安全確保や事故防止にもつながります。安藤さんの現場全体を見守る力があるからこそ、従業員や外注スタッフが気持ちよく働くことができているのです。
「自分で作業効率や段取りを考えることが一番成長につながるので、その人の実力に合わせて仕事を任せています。色々指示されるのは、誰だって面白くない。『やってみて失敗したら責任は僕が取るから』と、内心はひやひやしながら任せています(笑)もし悩むことがあれば、気軽に相談してほしい。仕事が円滑に進むように、全力でバックアップします」。
従業員の高橋さん「独立経験のある自分も、学ぶことが多い」
●入社の経緯を教えてください。
自分が独立していた当時に地元の先輩からCAYを紹介されて、もともと外注スタッフとして働いていました。一緒に働く中で学ぶことが多かったため、正社員として入社することになりました。
●CAYの魅力は何ですか。
従業員の意見を聞いて、仕事を任せてくれるところ。困ったときには助けてくれるので、とても働きやすいです。昼食は安藤さんが奢ってくれるので、昼からお寿司をごちそうになったこともあります。
●安藤さんは、高橋さんから見てどんな存在ですか。
優しくて面倒見がいい兄のような存在で、プライベートの相談にも乗ってもらっています。仕事面では頭の回転が早くて、現場を見ただけで段取りを組める人。手が届かないような存在だからこそ、「いつか越えてやるぞ」と思っています(笑)
●どんな人と働きたいと考えていますか。
(高所作業になるので)勇気がある人。元気な明るい人が入社してくれればうれしいです。