「昭島市の水はおいしい」それはなぜでしょうか。現在、東京都で深層地下水100%の水を飲める自治体は昭島市だけ。この貴重な水を供給するために、給排水管工事を行っている企業のひとつが株式会社浅井設備。今回お話を伺ったのは2023年に代表取締役へ就任した清水洋平さん。代々で守ってきたインフラ事業と、今後の思いを語ってもらいました。
企業情報:株式会社 浅井設備
事業概要:給排水施工管理・空調施工管理・水道修繕
住 所:昭島市
代表取締役:清水 洋平
昭島のインフラを支える「縁の下の力持ち」
株式会社浅井設備では創業以来、給排水施工管理や空調施工管理、水道修繕などの設置工事を手掛けています。
ちょっと想像がしにくいかもしれませんが、道路でいえばコンクリートの下、建物では壁の向こう側に必ず配管が通っています。配管が通ることで、人々の生活に必要不可欠な水、ガス、電気の3大インフラが整備され、私たちの暮らしが成り立っています。「設備」を人間で例えるなら、まさに「血液」とも言えるでしょう。
給排水施工管理は、建物内で水を供給するパイプ設計や工事を行い、水がスムーズに流れる仕組みを作り、水道やトイレを安心して使える状態を確保します。
また、空調施工管理は空調システムの設計や施工、保守を行います。建物の天井に取り付けたエアコンから適切な温度や湿度を保つことができ、快適に過ごせるための欠かせない工事です。
昭島市の他にも羽村市、武蔵野市、東京都で菅工事業に特化した登録許可を取得し、長年に亘り設計施工から保守までトータルに対応できます。
現在は1現場あたり、自社スタッフ2名〜4名を配置し、一般住宅から新築マンション、市内の学校や老人ホームに至るまで幅広い配管作業に携わっています。
「取引先が大手ゼネコンや官公庁からの依頼が多く、おかげさまで毎年安定した受注をいただいています。品質と信頼を築きながら、社会貢献ができることはありがたいですね」と清水さん。
施工管理の業務では、まず依頼された現場の用途や規模に応じて施工プランを作ります。お客様に見積書を提出し、許可が下りれば施工準備を進めていきます。各メーカーに機器の手配や協力業者の手配、必要な書類の作成などを行うのも重要な仕事です。事前に設計書を渡して、入念な打ち合わせをしながら詳細を固めていきます。
確実な完成を目指すために、納期や予算、工事開始後の進捗など全般の動きを見守りながら、長期間にわたりプロジェクトを進めるのが一連の流れです。
「プロジェクトは、規模によりますが半年〜1年程かかる現場が多く莫大な金額が動くので、工事が完了した際にはひとりでは決して味わえない達成感があります。今でも過去に自分が関わった現場や建物を見て、未来に残る仕事ができたと誇りに思います」
こうして株式会社浅井設備は、昭島市に欠かせない「縁の下の力持ち」として、人々の生活基盤を作り上げてきました。
「30年、続けられる仕事に就こう」と決心
昭和49年に創業した浅井設備工業所。先代は清水さんの祖父 浅井政次さんと兄 浅井義夫さん。兄弟で昭島市宮沢町に街の水道屋さんとして事業を始めました。
昭和57年に株式会社浅井設備と改称し、平成24年に宮沢町から田中町へ本社を移転。昨年の令和5年8月、父親の清水吉仁さんより、代表を引き継いだのが清水洋平さんです。
「祖父は京都出身で、戦後は昭島市に移り住みました。祖母からは、夜勤で配管工事をしていると、近所の人が温かい食べ物を差し入れしてくださり、インフラ整備をありがたく思っていただいたそうです。祖父の代は職人さんが多く、父親の代からは現場での施工管理が主な仕事になり、時代の流れと共に現在の形へ変わっていきました」
子供の頃は、祖父に会いに工業所へ遊びに行っていたと話す清水さん。部活は野球部に所属し、スポーツ大好きな少年だったそうです。
その後、横浜国立大学経営学部に入学。卒業後は金融関係に勤めようと考えていたそうですが……。
「たまたま就活生に向けた企業スピーチで、ワタミ株式会社 渡邉美樹社長の講話を聞く機会がありました。そこで『30年間続けられると思う仕事に就きなさい』という言葉が印象的で、やはり家業である管工事業で働くことに決めました」
卒業後は社会経験を積むため、管工業での上場企業へ就職。なんと、配属先は現場ではなく経理でした。
30歳までに企業の経済活動に関わるお金の流れを知り、経営に重要な収益のバランスを見る業務は今の仕事に大いに役立っているとのこと。
2011年に株式会社浅井設備に就職し、一社員として現場に立ってきました。
そんな清水さんが今でも忘れられないのは35歳の時、初めて急遽ピンチヒッターで任された学校現場の工事。半年間で工事を完了しなくてはならないプレッシャーに頭を抱える日々を送ったと言います。
「こんな大きなプロジェクトを私にできるはずがない。抜擢した父に不信感さえ抱いていました。最後は納期に間に合わないと覚悟しましたが、下請けの職人さんたちが助けてくれました。この経験で大いに自信が付き、他のプロジェクトで困難なことがあっても乗り越えられるようになりました。振り返ってみると、このプロジェクトが、私を大きく成長させくれたのだと思います。同時に機会を提供してくれた先代にも感謝しなければなりません」
仕事を円滑に進めるために大事なことは、同じ現場で働く人たちとのコミュニケーションだそうです。
「建物は、我々だけでは建てられません。これまでの経験から同じ現場に関わる人たちはみんな、運命共同体だと思っています。チームワークで良いところも、悪いところもみんなで味わうという気持ちがないとうまくいかない」
中でも、「現場監督を立てる」ことが重要でお互いに力を貸し合い、監督が指示する方向性に合わせて工事を進めることが成功への秘訣だとか。
終始、明るく笑いながら話す清水さん。これからのインフラ事業を担っていく人に、自分の体験や学んだ技術を惜しみなく伝えていきたいと話していました。
未経験から2億規模のプロジェクトに挑戦
現在、20代〜70代までの社員が12名が在籍する株式会社浅井設備。幅広い世代が集まっていますが、次世代の若手技術者を求めています。
以前、30代の社員が2億円規模の工事をお客様に引き渡し、大々的なプロジェクトで成果を上げました。
「彼は大卒で入社して、もちろん最初は技術も知識ゼロでした。周囲もサポートしながら、最後までなんとかやり終えてすごく成長したのではないかと感じます。建物は自分だけの力だけでは建てられませんから、協力してくれるに全ての方に感謝をする気持ちや向上心を高められてもらえたらと思います」
特に働くことに、学問も経験も問わないという清水さん。重要なのは、人とコミュニケーションをとることが苦でないことや、メンタルがタフであることだそう。
一人前の技術者になるには、覚えることが多く時間がかかります。でも、技術を取得できれば一生もの。入社後はしっかりフォロー体制を整え、1人で現場に行かせるようなことはしないそうです。
清水さん曰く、これから技術者になれるのはむしろラッキーかもしれません。今は昔よりも職人さんがぐっと減っている中、A Iや機械が進歩しても、人でなければできない仕事がたくさんあります。
「最初は職人さんに付いて行き、道路などの給排水管工事の基礎を見て、徐々に修理やお客様とのやり取りなど徐々に覚えていってもらえればと思います」
入社3年〜5年後にはひとりで小さなマンションなどを担当することもできるようになるため、未経験からでも確実に技術を磨ける環境です。
また、資格取得制度として給水装置工事主任技術者や排水設備工事責任技術者、2級管工事施工管理技士などに合格した場合は、かかった費用は全額負担してくれるそうです。
取材中、「勉強したい人には、塾代も出そうか検討中」と今後の社員へのスキルアップを考えて、色々検討していた清水さん。意欲があれば相談に乗ってもらえて、自分の成長に繋げられる環境です。
会社の新しい雰囲気を作っていきたい
最後に、清水さんに株式会社浅井設備の今後について聞きました。
「代表になっても特に気持ちの変化とかはありません。先代からの良い部分は見習い、背中を追いかけるというよりかは、僕は僕で従業員の皆さんと会社の色を作っていきたいと思います」
なにより大事に思うことは、未来のインフラ事業に興味がある若い担い手さんたちと、昭島市や東京都の今後を考えていきたいとのこと。
とは言いつつ、実は24年の2月から70代のゴールドルーキーが入社したと話す清水さん。仕事に対しての向き合い方が真剣であれば、年齢に捉われず何度でも挑戦できるのが株式会社浅井設備の魅力の一つのようです。