平日の夕方、秋川駅で電車を降り、駅周辺で買い物を済ませて家へ帰る。
休日は少し車を走らせ、秋川の河原で子どもと過ごす。
同じあきる野市でも、武蔵五日市駅から西へ進めば、窓から見える山がぐっと近くなり、川や森が休日の目的地ではなく、日々の風景に変わっていきます。
あきる野市の暮らしやすさは、「自然が豊か」という一言では語れません。
買い物や通勤の便利さを優先するのか。多少の不便を受け入れてでも、川や山の近くで暮らしたいのか。その中間を探すのか。
何を生活の近くに置きたいかによって、選ぶ地域が変わる街です。
前編では、製造業、観光、医療・福祉など、あきる野市で働く魅力を紹介しました。後編では、交通、買い物、自然、子育て、防災から、あきる野市で暮らすことを考えます。
▶ 前編はこちら:あきる野市で働く魅力|観光だけではない、ものづくりと地域を支える仕事

東西18km。市内でも暮らしの風景が変わる
あきる野市の面積は73.47㎢。東西18km、南北12.7kmに広がっています。
人口は2026年8月1日現在で78,489人、世帯数は37,884世帯です。
市の移住情報サイトでは、市内を大きく「市街地エリア」「市街地と自然があるエリア」「自然エリア」の3つに分けています。
| エリア | 暮らしの特徴 | 住む前に確認したいこと |
|---|---|---|
| 市街地エリア | 住宅地、スーパー、飲食店、保育施設などが集まり、日常の用事を済ませやすい | 駅までの距離、道路の交通量 |
| 市街地と自然があるエリア | 武蔵五日市駅周辺など、住宅や商店がありながら秋川渓谷にも近い | 買い物先、通勤時間、バスの本数 |
| 自然エリア | 川遊び、ハイキング、温泉などを日常の近くで楽しめる | 車の必要性、通信環境、災害リスク |
市街地に住んだからといって、自然が遠くなるわけではありません。反対に、武蔵五日市周辺でも、駅や商店に近い場所を選べば、自然だけに偏らない暮らしができます。
ただし、「あきる野市なら、どこに住んでも便利で自然が近い」というわけではありません。
住所が数km変わるだけで、最寄り駅、買い物先、車を使う頻度が変わります。「あきる野市に住むか」と同じくらい、「市内のどこに住むか」が大切です。
※人口・世帯数は2026年8月1日現在。面積と市域の広がりは、あきる野市公式サイト「位置と地勢」によります。
平日の暮らしは、駅と車との距離で変わる
市内には、JR五日市線の東秋留駅、秋川駅、武蔵引田駅、武蔵増戸駅、武蔵五日市駅があります。
秋川駅周辺には、スーパーや飲食店、公共施設などが集まっています。仕事帰りに買い物を済ませたり、子どもと「あきる野子育てステーション ここるの」へ立ち寄ったりと、生活に必要な用事を比較的まとめやすい地域です。
一方、駅から離れた住宅地や市の西側では、買い物や通院、子どもの送迎を考えると、車を生活の道具として考えた方が現実的です。
市内では、路線バスや市内循環バス「るのバス」、一部地域を対象とした予約制乗合交通「チョイソコあきる野」も運行されています。ただ、市の地域公共交通計画でも、日常の移動は自動車が中心で、公共交通に課題を抱える地域が残っていることが示されています。
車が必要になることを、不便と感じる人もいるでしょう。
けれど、車があることで、日々の買い物と自然の中で過ごす時間を、同じ生活圏に収められるのもあきる野市です。平日は駅や市街地を使い、休日は秋川や檜原方面へ向かう。街の広さが、そのまま行動範囲の広さになります。
季節が、観光情報ではなく生活の予定になる

あきる野市は、市域のおよそ6割を森林が占めています。
春になると、直売所にのらぼう菜が並ぶ。夏には、粒の大きなとうもろこしを目当てにファーマーズセンターへ立ち寄る。暑い日は秋川の河原へ行き、少し涼しくなれば低い山を歩く。
観光情報として眺めていた季節が、自分の暮らしの予定に入ってきます。
五日市の檜原街道では、赤い布灯かりや行灯が夜の街並みを照らす「ヨルイチ」が開催されてきました。浴衣姿で歩く人や、地域の子どもたちが作った行灯が並ぶ光景は、大きな商業施設のイベントとは少し違います。
普段通っている道が、その夜だけ別の表情を見せる。
こうした時間に立ち会えることも、観光地を訪れる側ではなく、そこに暮らす人になる面白さです。
ただ、自然が近い暮らしには、草木の手入れや虫への対策もついてきます。川や観光施設に近い地域では、夏休みや行楽期の道路状況も確認しておきたいところです。
自然のきれいな部分だけを見るのではなく、季節ごとの変化も引き受ける。そのうえで、川や山が日常にあることを魅力と感じられるかどうかが、あきる野市での暮らしを左右します。
子育てで助かるのは、「困った日に行ける場所」
秋川駅前のトラストルピアには、「あきる野子育てステーション ここるの」があります。
雨の日でも子どもを遊ばせられる広いスペースがあり、授乳室やおむつ替えスペースも用意されています。一時預かりや子育て相談にも対応しています。
同じ建物内のこども家庭センターでは、子育てや家庭、友人関係など、18歳未満の子どもに関する相談を受け付けています。
また、公立阿伎留医療センターの敷地内には、病気中や回復期の子どもを預かる病児・病後児保育室「ぬくもり」があります。
制度の数だけを見ても、実際の子育てはなかなか想像できません。
雨が続いて外で遊べない日。少しだけ誰かに子どもを預けたい日。仕事があるのに、子どもの体調が戻りきらない日。
そんなときに頼れる場所があることが、暮らしの安心につながります。
一方、住む地域によっては、こうした施設まで車で移動することになります。保育園や学校だけでなく、病院や子育て施設までの経路も、物件選びの段階で確かめておきたいところです。
窓から見える川や山を、ハザードマップでも見る
川沿いや山に近い家は、窓からの景色に惹かれます。
朝に霧がかかる山。季節によって色を変える木々。歩いて行ける河原。
その風景は、あきる野市で暮らす理由になり得ます。ただし、川や斜面が近いということは、水害や土砂災害の可能性とも隣り合わせです。
市は、東秋留、西秋留、多西、増戸、五日市、戸倉、小宮の7地域に分けたハザードマップを公開しています。同じ地域内でも、洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域は場所によって異なります。
物件を見学したときは、窓からの景色と一緒に、ハザードマップ上の位置も見る。避難所までの道を、実際に歩いてみる。
自然の近くで暮らすなら、その土地のリスクまで知っておくことが、安心につながります。
まとめ|どの不便なら、受け入れられるか

あきる野市は、何でも近くに揃っている街ではありません。
地域によっては車が必要です。電車やバスの本数、買い物先までの距離、通勤にかかる時間も、事前に確認する必要があります。
それでも、平日の生活を大きく崩さずに、川や山の近くで暮らせる場所がある。市街地の便利さを選びながら、休日には自然の中へすぐ移動できる地域もあります。
住む場所を探すなら、晴れた休日の昼間だけでなく、平日の夕方や雨の日にも候補地を訪れてみてください。
駅から家まで歩く。仕事帰りを想定してスーパーへ行く。子育て施設や病院まで車を走らせる。夏の週末に道路の様子を見る。
そこで感じた不便が、自分にとって許容できるものかを確かめる。
あきる野市は、不便をなくしてくれる街ではありません。
その代わり、自分が受け入れられる不便と、手に入れたい暮らしを選べる街です。その選択が自分に合っていれば、少し遠い買い物先よりも、家の近くを流れる川や、季節ごとに色を変える山の方が、日々の満足につながっていきます。
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