TAMA WORKをご覧の皆さん、こんにちは。採用定着士/社会保険労務士の高木です。
「採用と定着で中小企業の発展を支援する」をミッションとして、多摩地域を中心とした中小企業のサポートをさせていただいております。
この記事では「せっかく採用したのに…を防ぐ!社員が定着する職場づくりのポイント」と題して、「採用はできたが、すぐ辞めてしまう・・・」
「定着率を上げたいが、どうしたらよいかわからない・・・」
といった人材定着にお悩みを持つ中小企業経営者、人事担当者、管理職の皆さんに役立つ内容を連載でお届けしています。
第11回目は「頑張った社員に報いていますか?評価を活かす賃金制度のつくり方」についてお伝えします。
はじめに

これまで第9回・第10回では、社員のやる気と成長を引き出すための評価制度と、その運用のポイントについてお伝えしてきました。
しかし、評価制度をどれだけ丁寧に運用しても、「評価の結果が処遇にどう反映されるのか」が見えなければ、社員の納得感や定着にはつながりません。
そこで今回は、評価制度とセットで考えるべき「賃金制度」について解説します。
ポイントは、評価の結果が分かりやすく、継続的に賃金へ反映される仕組みをつくることです。
1.「基本給の中身」を明確にすることが重要
中小企業の賃金制度でよくあるのが、「基本給は何となく決めている」「昇給額は社長の頭の中」というケースです。
これでは、社員から見て「何を頑張れば給料が上がるのか」が分からず、「頑張っても頑張らなくても同じ」という意識につながりかねません。
そこでおすすめしたいのが、基本給を2つの要素に分けて設計する方法です。
例えば、「役割給」と「評価給」の2つとします。
役割給:会社の中で担っている役割・仕事の責任度合いに対する報酬
評価給:評価結果に基づく、日々の頑張りや成果への報酬
とします。
この2つを分けることで、「役割が上がれば給与水準が上がる」、「同じ役割の中でも、頑張った人は昇給する」という、社員にとって理解しやすい仕組みになります。
2.役割給は「等級」で決める

役割給は、等級制度と連動させて決定します。
等級とは、役割や職責をレベル分けしたもので、昇格ステップを示したものです。
たとえば、以下のような設計が考えられます。
| 等級(役職) | 金額 |
|---|---|
| 7等級(部長) | 180,000円 |
| 6等級(課長) | 165,000円 |
| 5等級(係長) | 150,000円 |
| 4等級(主任) | 135,000円 |
| 3等級(一般上級) | 120,000円 |
| 2等級(一般中級) | 110,000円 |
| 1等級(一般初級) | 100,000円 |
役割給は、「今どのポジションを任せているか」に対する報酬です。
そのため、昇格=役割が一段階上がることを意味し、昇格すれば役割給も上がります。社員にとってシンプルでわかりやすい仕組みです。
昇格の判断は、毎年の評価結果(特にスキル評価)を重要な資料としつつ、等級ごとに定めた基準に照らして行います。「上位等級の役割を安定して担える」と判断できた場合に、昇格させるのが基本的な考え方です。
給与と等級が結びつくことで、社員は「評価で求められている行動を積み重ねると、将来どんな立場になれるのか」を具体的にイメージできるようになります。これは定着の観点で非常に大きな意味を持ちます。
3.「評価による昇給」でメリハリをつける

一方、評価給は評価結果に応じて昇給するもので、毎年の昇給を積み上げたものです。
たとえば、以下のようなシンプルな設計です。
| 評価 | 昇給額 |
|---|---|
| S評価 | 8,000円 |
| A評価 | 6,000円 |
| B評価 | 4,000円 |
| C評価 | 2,000円 |
| D評価 | 0円 |
このように評価ごとの昇給額を明示することで、社員は評価と昇給の関係を具体的に理解できるようになります。「次はどの評価を目指せばよいのか」が明確になるため、行動や目標も定まりやすくなります。
ここで重要なのは、この金額を“絶対額”にしないことです。毎年の業績や人件費の状況に応じて、金額を調整できる余地を残しておくことが、経営上とても大切です。
「今年は業績が厳しいから少し抑える」、「今年は利益が出たので手厚くする」
こうした判断ができるよう、あらかじめ制度上に“幅”を持たせておくことをおすすめします。
また、評価給については、等級ごとにレンジ(範囲)を決めておきます。
例えば、1等級は100,000~140,000円とした場合、上限の140,000円に達したら昇給はストップしてしまいます。そうならないよう、上の等級に早く昇格してもらうことを促す仕組みです。
4.評価制度と賃金制度はセットで初めて機能する
評価制度だけ、賃金制度だけを整えても、社員の定着にはつながりません。
評価が、昇給・昇格という形で報われることで、初めて社員は「ここで頑張り続けよう」と感じます。
中小企業では、「大きな昇給はできない」という制約も多いと思います。
だからこそ、昇給額の大小ではなく、評価の結果の差が給与に明確に反映される仕組みが重要です。
まとめ

賃金制度は、単なる給与の計算ルールではありません。
それは、会社が社員の頑張りにどう応え、どんな行動や成長を大切にしているのかを示す仕組みです。
評価制度によって社員の行動や成果を見える化しても、その結果が給与に反映されなければ、社員の納得感は高まりません。
評価制度で育て、賃金制度で報いる。この一貫した仕組みこそが、社員定着の土台になります。
プロフィール
社労士事務所CRAFT 代表
採用定着士/特定社会保険労務士 高木 厚博(たかぎ あつひろ)
1974年大阪生まれ。私立清風高校、関西大学法学部卒業。大手外食企業にて、店舗管理等を経験。
退職後バイトをしながら試験勉強をし、社会保険労務士試験合格。地域最大級の社労士事務所に勤務。約15年勤務したのち2019年11月独立開業。顧問先企業の人事・労務の課題解決に取り組む一方、「採用と定着で中小企業の発展を支援する」をミッションに、採用支援、賃金制度・評価制度構築、「パワハラ予防研修」や「承認力向上研修」などの社内研修で中小企業の社員の定着・育成を支援している。
金融機関、商工会議所主催セミナーなど講演実績多数。パワハラ予防士。承認ファシリテーター。
著書「うちはいい会社です!と社員から言われる就業規則25のチェックポイント」(共著、泉文堂)。
NHK総合テレビ「おはよう日本」『103万の壁 企業の足かせ』出演。
好きな飲み物:よなよなエール 好きな食べ物:天下一品こってり
【連絡先】
〒206-0002 東京都多摩市一ノ宮1-26-7 ラミアール聖蹟508

