#10 作って終わりにさせない!評価制度運用のポイント

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TAMA WORKをご覧の皆さん、こんにちは。採用定着士/社会保険労務士の高木です。
「採用と定着で中小企業の発展を支援する」をミッションとして、多摩地域を中心とした中小企業のサポートをさせていただいております。
この記事では「せっかく採用したのに…を防ぐ!社員が定着する職場づくりのポイント」と題して、
「採用はできたが、すぐ辞めてしまう・・・」
「定着率を上げたいが、どうしたらよいかわからない・・・」
といった人材定着にお悩みを持つ中小企業経営者、人事担当者、管理職の皆さんに役立つ内容を連載でお届けしています。

第10回目は「作って終わりにさせない!評価制度運用のポイント」についてお伝えします。


はじめに

せっかく評価制度を導入しても、「結局、形だけになってしまった」「評価に納得感がないと言われてしまった」といった声を聞くことがあります。制度を設計することはスタートにすぎず、運用こそが評価制度の成否を分けるカギです。

今回は、評価制度の「運用」に焦点を当て、失敗しないためのポイントを解説します。

1.運用の要は「評価者」

評価制度の運用の中心となるのは、評価者である上司です。評価制度が機能していない企業の多くは、評価者の認識やスキル不足に起因しています。「忙しいから」「今までの感覚で何となく」といった理由で、評価をおざなりにしてしまうと、社員の不信感につながります。

「記入して提出すれば終わり」になってしまうと、社員にとっては何のための評価か分からず、やる気を削ぐ原因になります。運用の目的は、制度を回すことではなく、“社員が前向きに成長していけるように支援すること”であるという原点を忘れないようにしましょう。

制度の導入時は、必ず評価者研修を行い、正しい評価の仕方を身につけてもらいます。

2. 目標管理で成果と成長を可視化する

目標管理は、社員一人ひとりが一定期間で達成すべき目標を設定し、その達成度を評価する方法です。評価制度をうまく機能させるうえで、適切な目標を設定することはとても重要です。

目標については、達成基準を明確にすることがポイントです。数字などで成果が明確に測れる業務であれば定量的な指標(売上、処理件数、完了数など)を設定するのが有効です。一方、定量的な目標が難しい業務では、「○○の作業を一人でできるようになっている」「新入社員の指導を担当できるようになっている」といった、業務遂行の状態を目標に据えることがポイントです。

目標は、「高すぎず、低すぎず」、努力すれば達成できる水準で設定します。部下の設定した目標のレベルが適切かを上司がチェックし、必要であれば修正します。

3.評価エラーに注意する

評価の信頼性と公平性を保つうえで、評価エラーへの理解と対策は不可欠です。どんなに制度が整っていても、評価する側の主観や先入観が入れば、社員の納得感は得られません。

注意したいのは以下のような評価エラーです。

  • ハロー効果:ある一つの特徴が全体評価に影響してしまう。
  • 論理的誤差:「この行動ができるなら、あれもできるはず」と論理的に関連づけて評価してしまう。
  • 寛大化傾向・厳格化傾向:どの社員に対しても甘く(または厳しく)評価してしまう。
  • 中心化傾向:極端な評価を避け、無難に真ん中の評価を付ける。
  • 対比誤差:評価者自身との比較で評価してしまう。

こうしたエラーを防ぐには、評価者自身が評価項目の意味を正しく理解し、日頃から部下の行動や成果を観察しておくことが大切です。また、複数の視点から評価を行う仕組み(複数評価者制)も、偏りを防ぐうえで有効です。

4.フィードバック面談で「ふり返り」と「次への一歩」をつなげる

評価は“つけて終わり”ではなく、面談を通じて本人にしっかりフィードバックを行うことで、その意義が深まります。フィードバック面談の目的は結果を通知するだけではなく、評価の背景や今後への期待を伝え、成長を支援することです。

その際、「どうしてこの評価になったのか」という根拠を具体的に伝えるとともに、今後伸ばしていきたい点や次の目標も共有します。「今の自分が、将来どう成長していけるのか」が見えるようになることで、本人のモチベーションも上がります。面談は上司からの一方通行にせず、部下に話してもらい、振り返りや気づきを引き出すようにしましょう。

また、前期の目標の達成状況を確認し、課題があれば振り返り、次期の目標設定につなげていきます。目標設定→実行→評価→ふり返り→次の目標というPDCAサイクルを回すことで、評価制度は社員の成長を継続的に支援する仕組みとなります。

5.評価は事実に基づいて行う

評価において大前提となるのは「事実に基づいて判断すること」です。思い込みや印象ではなく、実際にその社員がどんな行動をし、どんな成果を上げたのかをもとに評価しなければ、本人の納得は得られません。

そのためには、日常的に部下の行動や成果をよく観察し、記録しておくことが必要です。たとえば、「○月○日誰よりも早く新しい業務手順を習得し、他のメンバーに共有した」「○月○日取引先から感謝の連絡をもらった」など、具体的なエピソードや事実を積み重ねておくことで、後から振り返る際に主観が入りにくくなります。

まとめ

評価制度は「査定のためのツール」だけでなく、「成長支援のツール」です。運用の中で、社員の成長を信じ、期待し、その実現に向けて伴走するという姿勢を上司が持つことが、制度を形骸化させず、生きた仕組みとして活用するためのカギです。スムーズに運用できるまでには数年かかるのが普通です。あきらめずに、定着まで取り組んでください。

プロフィール

社労士事務所CRAFT 代表
採用定着士/特定社会保険労務士 高木 厚博(たかぎ あつひろ)
1974年大阪生まれ。私立清風高校、関西大学法学部卒業。大手外食企業にて、店舗管理等を経験。

退職後バイトをしながら試験勉強をし、社会保険労務士試験合格。地域最大級の社労士事務所に勤務。約15年勤務したのち2019年11月独立開業。顧問先企業の人事・労務の課題解決に取り組む一方、「採用と定着で中小企業の発展を支援する」をミッションに、採用支援、賃金制度・評価制度構築、「パワハラ予防研修」や「承認力向上研修」などの社内研修で中小企業の社員の定着・育成を支援している。

金融機関、商工会議所主催セミナーなど講演実績多数。パワハラ予防士。承認ファシリテーター。

著書「うちはいい会社です!と社員から言われる就業規則25のチェックポイント」(共著、泉文堂)。
NHK総合テレビ「おはよう日本」『103万の壁 企業の足かせ』出演。
好きな飲み物:よなよなエール 好きな食べ物:天下一品こってり

【連絡先】

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