<第4回> 入社3カ月が分かれ目!定着支援のステップ
TAMA WORKをご覧の皆さん、こんにちは。採用定着士/社会保険労務士の高木です。
「採用と定着で中小企業の発展を支援する」をミッションとして、多摩地域を中心とした中小企業のサポートをさせていただいております。
この記事では「せっかく採用したのに…を防ぐ!社員が定着する職場づくりのポイント」と題して、
「採用はできたが、すぐ辞めてしまう・・・」
「定着率を上げたいが、どうしたらよいかわからない・・・」
といった人材定着にお悩みを持つ中小企業経営者、人事担当者、管理職の皆さんに役立つ内容を連載でお届けします。
4回目の今回は「入社3カ月が分かれ目!定着支援のステップ」についてお伝えします。
はじめに
「入社から1週間は順調だったのに、1カ月もしないうちに辞めてしまった」
「業務には慣れてきたようだが、どこか孤立していてチームになじまない」
こうした声は、多くの中小企業で耳にする悩みです。
その原因は、本人のスキルや能力ではなく、入社後のフォローや職場への適応支援の不足にあることも多いのです。
今回は、中途採用者が早期に職場に馴染み、戦力として活躍するために重要な入社後3カ月間の具体的な支援ステップについてご紹介します。
なぜ3カ月がカギなのか?

中途採用者は、「即戦力としての期待」と「自分らしさを出す余地」のバランスを探りながら働いています。
その中で、次のような心の変化が起きやすいのが3週間〜3カ月の期間です。
3週間前後:環境に慣れてくる一方、業務量ややり方に少しずつ違和感が生じる1カ月半〜2カ月目:必要な承認やフィードバックがないと、不安感や孤立感を感じやすい
3カ月目:この会社に「自分の居場所があるかどうか」を見極めようとする
この期間に適切な支援がないと、モチベーションが低下し、退職を考えはじめることになります。
【3週間〜1カ月】現場適応と人間関係を深める支援

上司との1on1ミーティングを継続する
入社1週間目では毎日実施する上司との面談「1on1ミーティング」ですが、それ以降の継続が重要です。理想的な頻度は週1回、少なくとも隔週で実施しましょう。
この時期、表面上は順調に見えても、内心では「相談しにくい」「孤立している」と感じていることがあります。1on1の機会を定期的に設け、“安心して話せる関係性”を育てることが大切です。
メンター制度を活用する
メンター制度とは、業務上の上司とは別に、気軽に相談できる先輩社員が入社後のフォローを担当する制度です。この制度を導入することで、1on1とは別の立場からの支援が生まれ、孤立を防ぎ、気づきの幅も広がります。
また、メンター自身にとっても「育てる経験」が成長機会となり、職場全体の活性化にもつながります。
チームとの関係性を築く「接点の場づくり」
中途採用者は、仕事の合間に自然と人間関係を築くのが難しいことがあります。業務以外での接点が乏しいと、いつまでも「よそ者感」が抜けません。
例えば、ランチ会や懇親会の場を設け、気軽なコミュニケーションが取れる場を意図的につくることで、「チームの一員」としての自覚と居心地が生まれます。
【1カ月〜3カ月】中期的な評価・将来像の提示で定着を後押し
1〜1.5カ月後に「中間面談」を行う
1カ月程度経つと、業務の流れにもある程度慣れ、チームの雰囲気もつかめてくる時期です。
ここで、「自分はこの会社でどう評価されているのか?」を知る機会を設けることで、次のような効果が生まれます。
・方向性の確認ができる
・努力が認められていると感じられる
・自分に期待されている役割を再認識できる
内容は次の3点を軸に構成すると効果的です。
・できていることを承認する
・改善点・修正すべき行動を建設的にフィードバックする
・期待される中期的な役割と目標を伝える
小さな成功体験の積み重ね
「できていないこと」に目を向けがちですが、定着のためには「できていること」を意識的に伝えることが重要です。
例えば、小さな業務を一つ任せる、お客様への対応を一部担当してもらうなど、業務に責任を持たせます。これらの取り組みに対して、「任せた理由」「期待していること」をきちんと言葉で伝え、小さな成功体験を積ませることが、今後の自信につながります。
【3カ月前後】「ここで働き続けたい」と思える未来像を提示する

キャリア面談を通じた将来の見通しの共有
3カ月目は、「このまま続けていくかどうか」を内省する時期です。だからこそ、このタイミングでのキャリア面談が極めて重要です。
・この先1年でどんな経験を積めるのか
・どんなスキルを求めているのか
・マネジメント・専門職など、将来の社内キャリアの選択肢
こうした未来のビジョンが共有されることで、「この会社でなら、自分も成長できそうだ」という納得感が得られます。
まとめ
中途採用者が「この会社でやっていける」と実感するには、この入社後3ヵ月間がとても重要です。適切なフォローや評価、関係構築、そして将来への展望を提示することが、定着の大きなカギとなります。
特に「見てくれている」「承認されている」「期待されている」と感じることが、社員の安心感と自信につながります。
入社後3カ月という期間は、単なる「お試し期間」ではなく、会社と新入社員の信頼関係を築くための重要な助走期間です。ぜひこの期間を最大限に活用し、早期離職を防ぎ、長期的な活躍につなげていきましょう。
プロフィール
社労士事務所CRAFT 代表
採用定着士/特定社会保険労務士 高木 厚博(たかぎ あつひろ)
1974年大阪生まれ。私立清風高校、関西大学法学部卒業。大手外食企業にて、店舗管理等を経験。
退職後バイトをしながら試験勉強をし、社会保険労務士試験合格。地域最大級の社労士事務所に勤務。約15年勤務したのち2019年11月独立開業。顧問先企業の人事・労務の課題解決に取り組む一方、「採用と定着で中小企業の発展を支援する」をミッションに、採用支援、賃金制度・評価制度構築、「パワハラ予防研修」や「承認力向上研修」などの社内研修で中小企業の社員の定着・育成を支援している。
金融機関、商工会議所主催セミナーなど講演実績多数。パワハラ予防士。承認ファシリテーター。
著書「うちはいい会社です!と社員から言われる就業規則25のチェックポイント」(共著、泉文堂)。
NHK総合テレビ「おはよう日本」『103万の壁 企業の足かせ』出演。
好きな飲み物:よなよなエール 好きな食べ物:天下一品こってり
【連絡先】
〒206-0002 東京都多摩市一ノ宮1-26-7 ラミアール聖蹟508