「梅澤朗広の採用SDGs」第11回目は、「スポットワークの普及が日本の就労人口減少の問題を解決する?」について考えます。
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スポットワーク」が企業と働く人をつなぐ新たな雇用形態
「繁忙期の人手不足」や「この日の短時間だけお仕事を頼みたい」—そんな悩みを抱える中小企業経営者は多いのではないでしょうか。このような課題の解決策として、今、注目を集めているのが「タイミー」を代表とするスポットワークです。
「タイミー」は、必要な時にピンポイントで人材を確保し、さらに適性のある人材を本採用につなげることも可能です。企業の人手不足を解消する新たな手法とは?実際にタイミーなど複数のスポットワークツールを利用してアルバイトとして働いた経験と、タイミーでアルバイトを募集した経験の両方の観点から、中小企業にとって、この新しい雇用形態がどのようなチャンスをもたらすのかを具体的な事例とともに解説します。

日本の就労人口減少という課題
日本は少子高齢化の進行に伴い、深刻な就労人口減少の問題に直面しています。中小企業庁の統計によると、我が国の生産年齢人口(15~64歳)は、1995年の約8,700万人をピークに減少に転じており、2015年には約7,700万人まで減少しています。この傾向は今後も継続し、2060年には約4,800万人と、2015年の約6割の水準まで減少すると推計されている。このままでは労働力不足が経済成長の足かせとなることが懸念されています。

総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成29年推計)より
スポットワークの普及
こうした背景の中で、注目を集めているのが「タイミー」を代表とするスポットワーク(短期・単発型の働き方)です。タイミーは、働きたい人と即戦力を求める企業をマッチングするサービスで、登録者は自分のスケジュールに合わせて働くことができます。この仕組みは、従来の固定的な雇用形態とは異なり、働く時間と場所の自由度を高めるものです。

企業側のメリット
即戦力の確保:繁忙期や突発的な人手不足への迅速な対応が可能となります。短期の業務に特化した求人を出すことで、必要な時に必要なだけの人材を確保できます。
お試し雇用が可能:短期間で働いてもらい、その人材の適性やスキルを確認できます。気に入った人材は正社員登用などの引き抜きも可能で、採用リスクの軽減につながります。
低コスト:時給+手数料(30%)+振込手数料と、比較的低コストで運用できます。また、キャッシュフローとしても、月末締めの翌月末払いです。
働く側のメリット
柔軟な働き方:学生や副業希望者、介護や育児をしている人など、フルタイム勤務が難しい人でも、自分のライフスタイルに合わせて働くことができます。
職場選びの自由:さまざまな仕事を経験し、自分に合った仕事や環境を見つけることができます。気に入った職場があれば、長期的な雇用に応募することも可能です。
給与を即日受け取れる:「タイミー」は即日払いのため、業務完了後すぐに給与を受け取ることができることが喜ばれています。
もちろん、メリットがあればデメリットもあります。スポットワークに関するニュースについては、このデメリットばかりを取り上げた報道が多いと感じています。
企業側のデメリット
業務の明確化と単純化:短期間で即戦力として働いてもらうためには、業務内容を明確にし、誰でもすぐに取り組めるようなシンプルな作業に分解する必要があります。
マニュアルの整備:スポットワーカーが迅速に業務を理解できるよう、業務マニュアルの整備が求められます。
フォロー体制の強化:初めての職場でも安心して働けるように、簡単なオリエンテーションやサポート体制の構築が重要です。
働く側のデメリット
業務の募集時期が不定期で予測が難しい: スポットワークでは、募集がいつ行われるのか事前に分からないことが多く、安定したスケジュールを組むのが難しくなります。
多摩地区では募集件数が限られており、競争が激しい: 都心に比べて、多摩地区ではスポットワークの募集件数がまだ少なく、人気のある案件は数分で埋まってしまうため、希望する仕事に就けないこともあります。
収入の計画が立てにくい:仕事の募集時期が読めず、確保できる案件数も変動するため、毎月の収入を安定させることが難しく、計画的な生活設計がしにくくなります。
実際の現場から見たスポットワークの可能性
私はあるクライアントより「新規事業としてある業界に新規参入を考えている。効果的なオペレーションを組み立てていきたいので、複数の現場で働いて感じたことをレポートしてほしい」と依頼を受けて、スポットワークで働きました。
実際に複数の現場で働いて感じたことは、スポットワークが企業と働く側にもたらすメリットと成長の可能性です。例えば、ある日タイミーで働きに来た主婦の方は、英語で接客をしたり、顧客への気配りとして「おめでとうございます」と一言添える心遣いを見せたり、他の方は片手で電卓を素早く操作するなど、さまざまな人が多様なスキルを発揮していました。
タイミーで応募した理由を聞くと、「普段は家事や育児があるため。まとまった時間を働くのが難しいが、家の近くで短時間で働けることと、即日給与が振り込まれることが魅力的だ」という声がありました。また、別の方は「家事や育児で普段は家にいるが、スキマ時間で過去の仕事の経験を活かして役に立てるのが嬉しい」といった前向きな声もありました。
このように、スポットワークは単なる短期労働の枠を超え、働く人の多様な能力を活かす場となっています。企業と人材が互いに「お試し」で働くことで、ミスマッチを防ぎ、より良い雇用関係の構築に寄与しています。

スポットワークがもたらす新しい働き方の未来
スポットワークは、多くの人々に新たな働き方の選択肢を提供し、就労機会の拡大に貢献しています。Aさんは自分の能力を発揮できる条件の良い会社を見つけ、内定を辞退してその会社で正社員として働くことを決めました。
また、Bさんは就職活動中に収入を得るために働いた会社で、会社の理念や働きやすさに共感し、そのまま就職するケースもありました。
このように、タイミーの普及は、単なる労働力確保の手段にとどまらず、日本全体の生産性向上や就労人口減少問題への解決策の一つとなり得ます。企業にとって、自社の事業や理念、就労環境を発信したり整備するなど受け入れ体制の強化することで、新たな人材確保の可能性は高まります。
また、今おこなっている業務の中で、「どの仕事ならスポットワークの方にも任せられるか」「業務マニュアルを作成して教育体制を整える」「希望する人材を募集するために、どのように募集文を書けば良いか」といった点、考えていく必要があります。
タイミーなど複数のスポットワークで300時間以上働いた経験から、スポットワーク活用のアドバイスも可能です。もし導入を検討されている場合はご相談ください。
(※職業安定法上、建設業務や港湾運送業務など、一部利用不可な業種がありますので、利用にあたっては各事業者の注意事項をご確認ください)
プロフィール
梅澤 朗広
SDGusサポーターズ株式会社 代表取締役
日本JC公認SDGsアンバサダー
FC NossA八王子 アドバイザリーボード
大切にしている価値観:感謝・貢献・共創
野村證券、東京ヴェルディを経て2019年にSDGusサポーターズ株式会社を設立。SDGsの「持続可能な社会の実現」「誰一人とりのこさない」の理念に共感し、企業に対してCSV(共通価値の創造)の観点で事業活動と社会活動の両立に向けた経営サポートをおこなっています。SDGsと自社の活動に対する理解を深めてアクションを考えるワークショップや、様々なパートナーと連携して営業・広報・採用のサポートをおこなっています。
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