梅澤朗広の採用SDGs #5

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「梅澤朗広の採用SDGs」第5回目は、「自社の事業や取り組みを改善させるCSVという経営戦略について」をご紹介します!

前回はSDGs2.0の「六方良しで改善する」ことで新たな市場開拓や社会価値の再定義に繋がった事例をお伝えしました。今回は、六方良しで自社の事業や取り組みを改善させていくうえで抑えておきたい「CSV(Creating Shared Value)」について詳しくご紹介します。

目次

CSV(Creating Shared Value)とは

CSV(Creating Shared Value)とは、「共通価値の創造」と訳され、企業が社会的な価値を創出しながら経済的な利益を追求するという経営戦略を指します。

これまで、ビジネスにおいて企業は顧客の課題を解決することで利益を生み出してきました。例えば、美味しい料理をリーズナブルな価格で提供し、顧客の食欲を満たすというものです。こうした企業活動によって経済は発展してきましたが、その一方で環境に悪影響を及ぼすこともありました。日本では、1960年代の高度経済成長期における公害問題がその典型例です。

こうした反省を踏まえ、企業は利益を追求するだけでなく、社会や環境の問題を解決する責任があるという「CSR(Corporate Social Responsibility)」の考え方が広まりました。例えば、トヨタ自動車株式会社の「トヨタ・エコプロジェクト」は、環境負荷の低減を目指してハイブリッド車や電気自動車の開発・普及を進めるほか、生産工程におけるCO2排出削減や資源のリサイクル促進に注力しています。

しかし、CSRには業績が悪化すれば取り組みが難しくなる、予算が限られるといった欠点があります。そこで、経済の発展と環境の保護を両立させるために考えられたのがCSVです。

CSVでは、社会の課題を解決することで利益を生み出すという考え方を採ります。例えば、貧困によって教育が受けられない人々に対して、ビジネスを通じてその問題を解決していくというものです。しかし、これまでこのような社会課題は、利益を生み出すことが難しいと考えられ、CSRの観点での取り組みが一般的でした。

そこで、CSVには企業が取り組める3つの種類があると分類できます。

❶製品と市場のCSV

①製品と市場のCSVは、最も基本的なCSVの形です。途上国などでは、社会課題と顧客課題が一致することが多く、途上国向けのビジネスを創出することでCSVとなるケースが増えています。例えば、商品の環境への配慮やフェアトレードへの切り替えを行い、販路を国内から海外へ拡大することが挙げられます。このような取り組みは、自社が何のために存在しているのか、自社の事業によって解決したい社会課題は何かを問い直すことで、対象とするビジネス領域を明確にすることができます。

フェアトレードとは、発展途上国の生産者や労働者が公正な条件で取引できるように支援する仕組みのことです。具体的には、適正な価格を保証し、生産者が自立して持続的に発展できるようにする取引形態です。フェアトレードに取り組むことで、企業は社会的責任を果たしていることを示し、消費者からの信頼を得られることや、長期的に安定した供給を確保できるといったメリットが挙げられます)

❷バリューチェーンのCSV

バリューチェーンのCSVは、水や紙を節約するなど、エネルギーや資源を有効活用すること、調達や流通を効率化し、CO2の排出を抑えること、社員の健康や生産性向上を実現することなどを通じて、自社のコストも下げるといった取り組みが挙げられます。

例えば、バリューチェーンにおける「出荷物流」を改善する場合では、トラックや航空機などの輸送から、環境負荷の少ない鉄道や海運などの輸送に切り替えること(=モーダルシフト)が挙げられます。

世界最大級の化学メーカーであるダウ・ケミカルでは、生産拠点における真水の消費量を10万ガロン削減することで、400万ドルのコスト削減に成功しました。このように、社会課題の解決が自社のコスト削減にも繋がるため、取り組みを始めやすい点が特徴です。また、全社規模ではなく、部署単位で取り組みを開始できるスピード感もメリットです。

❸ビジネス環境のCSV

ビジネス環境のCSVは、自社に関連する企業をネットワーク化し、事業の効率を向上させることです。また、仕入先が抱える社会課題を解決することで、生産性を高め、利益の向上に繋げることができます。

例えば、ヘルスケア事業をおこなうノボノルディスクファーマ株式会社は糖尿病に関する知識が不足している地域で啓発活動を実施し、新規市場を開拓するとともに、糖尿病患者の命を救うという事例があります。時間や予算などの先行投資が必要ですが、将来的な業績への効果が期待されます。

自社の理念や事業に基づいて、取り組むべきCSVを設定し、その取り組みを発信することで、企業のファン作りに繋がります。また、その取り組みを応援するパートナーや仲間(社員)を増やすことにも役立ちます。こうした好循環をぜひ活用していただければと思います。

次回は、CSVに取り組むうえで明確にしておきたい自社のパーパスについて深掘りしていきます!

プロフィール

梅澤 朗広

SDGusサポーターズ株式会社 代表取締役
日本JC公認SDGsアンバサダー
FC NossA八王子 アドバイザリーボード

大切にしている価値観:感謝・貢献・共創
野村證券、東京ヴェルディを経て2019年にSDGusサポーターズ株式会社を設立。SDGsの「持続可能な社会の実現」「誰一人とりのこさない」の理念に共感し、企業に対してCSV(共通価値の創造)の観点で事業活動と社会活動の両立に向けた経営サポートをおこなっています。SDGsと自社の活動に対する理解を深めてアクションを考えるワークショップや、様々なパートナーと連携して営業・広報・採用のサポートをおこなっています。

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